知っていることを引き出す「質問返し」



「これどうやるの?」
「どうやるのでしたっけ?」

「これでいいですか?」
「どう思います?」

「やり直したほうがいいですか?」
「自分はどうしたいと思っていますか?」

このような会話を
くりかえしているわが施設です。

これはうちの施設に限ったことではなく、
常に、誰かを頼って生きてきたり、
自分の意見を持っていたにもかかわらず、
否定されたり、
誰かに左右された人生を
送ってきたせいか、
考えずに、支援者に聞く方が早いし、
支援者のほうが正しいと思っている人が、
知的障害がある人の中に
多くみられるのは事実です。

この状態から脱して、
自分で考えようと思い、
実行するには、
すごく時間がかかると思うのです。

長年の習慣は抜けません。

ご本人ができることはしていただく。
ご本人が、考える機会を作る。
ご本人がご本人の人生の主人公である。
私たちのやり方でなくても大丈夫なら、
ご本人のやりやすいようにしていただく。

このようなことをスタンスとした「自立」を
私たち自身が考えるのであれば、
私たちがすぐに答えを言っている状態が、
良いとは限りません。

質問をするという時は、
ご自身が答えを持っているときが多くあります。
これは、知的障害がある人だけでなく
私たちもそうですよね?
なんとなく、その人との関係性の中で、
質問をしてしまう。

自分の中に答えがあるのにも関わらずです。

ですから、
その人の中にある答えを
引き出していく支援をしましょう。

それが自立につながるのです。

では、どうやって、
その人の中にある答えを引き出すのか?

それは、質問返しです。

その人が質問してきたことを
ほぼそのまま質問してみるやり方です。

たとえば、
「どうやるのですか?」
と聞かれれば、
「どうやるのでしたか?」
と聞くと、その人が覚えていることを
話し始めます。
その時に大切なのは、
「そうですね。それであっていますね」
など、その人の回答を認めたり、
正しいことであると確認することです。

もうひとつ事例を。
「休み時間にしていいですか?」
「どう思いますか?」
「11時だから、休み時間にします」
「そうですね。どうぞ休んでください」
といった感じです。

知っているのに聞く。
わかっているのに聞く。
自分の考えがあるのに聞く。

そういったようなときは、
質問返しをしつつ、
ご本人の中にある答えを引き出します。

そういうことを経験することで、
自分の判断が間違いではないことに気づき、
ひとりでできるようになります。

もちろん、
全くわからないからこそ
質問をしてくる人もいますから、
それは、支援しましょう。

わかっているのに聞く人は、
経験がある人ですから、
経験したことがある同じシーンで、
聞いてきたときは、
覚えていたり、
自分の考えを持っている可能性の方が高いので、
それを引き出すことをしてみましょう。

彼らの中の正しさを
確認すること。
重要な支援です。