経験につながるための「ゆさぶり」



知的障害がある人には、
様々な活動などを通し、
経験を増やすということをすることがありますが、
生きる力を身に着けることにも
着目していますか?

彼らは体験派です。

「生きる」「生活する」に必要なことを
できるだけ経験することで、
その利用者の方の人生や生活に
役立つスキルとなります。

たとえば、うちの施設が開所した当時のことですが、
電子レンジを持っていない人がいました。

あれば温かい食事がとりやすくなるので、
買うことを進めましたが、
どうもピンとこないようでした。

そこで、同じ利用者で
電子レンジを持っている人に、
あえて感想を聞いてみました。

その方の意見は
「持っていたほうがいい」でした。
「楽だよ」
という感想も話してくださいました。

この言葉がきっかけで、
電子レンジを買ったのです。

さて、ここには二つの「生活」に関する
「ゆさぶり」を入れています。

一つは、電子レンジを持っていない人に、
持つことのイメージをお話ししています。
その方は、食堂で働いていたことがあり、
例えば、餃子などを温めたいときは、
蒸し器で温めていたようです。

20分でお湯を沸かし、
20分蒸してアツアツを食べていたのです。
それはそれですごい技術ではありますが、
40分かけないとおいしい餃子が食べられない。
ならば、
電子レンジという代物があるよと
お話ししたのです。

経験もあったからこそ、
40分かけて温かい餃子を食べられていましたが、
電子レンジとういう経験はなかったのです。

これに対し、よりよい生活に視点を当てました。

いろいろなメリットをお話しし、
最後に一緒に働く仲間の意見も聞き、
決定することができました。
それは、「リアル感」があったからだと思います。
他の利用者の人の意見も入り、
「使える道具」を実感したのでしょう。

また、もう一人の電子レンジを持っている人にも
よい経験になったと思います。
この方は、あまりご自身からお話をしない人。

意見を求められないとお話ししないのですが、
自分が思っていることを
人に伝えることができました。
そして、私からは、
お話ししてくれてありがとうとお礼をしています。

この方も、人の役に立ったという
実感はあったと思います。
電子レンジを買った人からも
お礼を言われていましたからね。

そして、こういう経験は、
別な生活をしている中で役立つのです。

そこから、電子レンジを持った人の
調理短縮の幅は広がり、
お話をしてくださった人は、だんだんに
ご自身からお話をしてくれることが
増えていきました。

つまり、あえて、
そういう場面を
設定するということなのです。。
日常の中で、
ただ過ぎるだけではなく、
そのチャンスを使うのです。

そのチャンスが、
彼らの「生活すること」や
「生きること」に役立つスキルを経験する場に
なるかどうかを考えてみてください。

そして、そのチャンスを使って
「ゆさぶり」をしてみましょう。

今している生活というには、
何か変化がないと、
新しいことは生まれません。

なにか、変化があれば、
今以上によりよい生活になるのです。
でも、変化がないから、何も変わらず、
やりにくいにもかかわらず、
そのままやり過ごしている可能性もあります。

彼らにとっては、
そこを自分一人で考えることは
簡単ではないので、
まず、どんな変化をおこしたら、
今の生活以上に
暮らしやすくなるのかという視点は大事です。

あえて、支援者から、ゆさぶることです。
日常的に、困っていそうな部分は、
つかんでおいてください。
そして、その困っていそうなことを、
いつでも解決する方向で考えていて、
チャンスを狙ってください。

支援者としての意見を言うだけではなく、
彼らが、
自分の考えとして、
考えられるような状況を作ることです。

自分で考え答を出したことは、
彼らの身になります。

経験につながるための「ゆさぶり」を、
支援スキルに追加しましょう!