「普通」という言葉。
この言葉は、障害者支援の世界では、
使わない傾向にあります。
使ってはいけない
「差別用語」ではありません。
でも、使わない言葉です。
もちろん、時には使いますから、
全く使わない言葉でもありません。
あなたが使う「普通」という言葉は、
どういう気持ちの時に使いますか?
自分の日常生活や人生の中で
自分がやっていることや
当たり前に思うこと、
常識と思っていることを
相手に伝える時に使っていませんか?
また、自分が当たり前にやっていることを
人がやっていない時や
自分が人と違うことをしているときで
自分がやっていることは、
正当なんだという主張もありますか?
あなたの「普通」は、
一般的に「普通」でしょうか?
あなたが「普通」と思っていることが
相手の「普通」でないことの方が
実は多くあります。
相手に言ったときに、
さらっと流されれば、
相手の「普通」は、
どういうことなのかを
知らずじまいになります。
例えば、
「普通、朝ご飯はパン食でしょ!」
「こういう場では、
ビールで始まるのが普通でしょ!」
このように、あなたが「普通」を
言った側であれば、
気にならないかもしれませんが、
言われた側なら、
あなたは、え?っと思うかもしれません。
たとえば、
「職場に朝来たら、
普通、○○しておくべきだ!」
「普通、障害者支援者なら、
こう考えるだろう?」
いかがですか?
言う側と、言われる側では、
感情の動きも違います。
もちろん、言う場面や相手によっても
変わってきますけど、
これを障害がある人に言う場面を
想定してみましょう。
あなたが、障害がある人に、
次のような言葉を使っていませんか?
「普通は、こうやるでしょ?」
「普通にしてください」
もう、お分かりになった人も
いるでしょう。
どんな場合でも、
その言葉を発した人の常識の中で
出てくる言葉なのです。
これが、相手の常識と違う場合もあり、
相容れないことになる場合も多くあります。
もちろん、自分と相手の常識が
同じ場合は使えます。
しかし、特に障害者支援の世界、
大きく言えば、人相手の仕事の場合、
なぜ、「普通」を使わないのでしょうか?
ひとりひとりの、
障害状況や生活状況、
さらに言うと人生そのものに
違いがあるからです。
もちろん、その人の生活のしやすさから
生れてきたことなのです。
だから、その生き方や考え方は、
常識外れでもないからです。
そういう人たちに対して、
「普通は、こうだよ」と、
あなたが思ってしまうことは、
彼らがしている「普通の生活」に
自分の考えを押し付けて
しまう可能性があります。
それは、危険です。
あなたが知っている
彼らの世界は、ほんの一握りです。
なかなか、本当の気持ちを
表現してくださらない人も
多くいらっしゃいます。
だから、危険なのです。
このような状態ではありますが、
その障害がある人たちそれぞれが
思っている「普通」に
寄り添うことは可能です。
もちろん、その人の「普通」であって、
他の人の「普通」ではありません。
毎日施設に来れないことが
「普通」の人もいます。
身体が洗えないことが
「普通」の人もいます。
熱が出たと、わからないことが
「普通」の人もいます。
できること、できないことが、
人それぞれ違いますから、
「普通」の範囲ももちろん違い、
支援者から「普通」と言われても、
それは、彼らにとって、
「普通」ではないこともあるということです。
だから、「普通」という言葉は、
使わないようにしています。
支援者から、「普通」と言われて、
それに太刀打ちできなければ、
彼らは押し黙り、
あなたへの信頼をそぐことでしょう。
あなたが、
「普通」という言葉を口癖のように
使ってしまう支援者でしたら、
どうぞご自身の
「普通といってしまう常識」を
変更し、「普通」といってしまわないよう
気をつけてみてください。
そして、障害がある人たちが、
一人ひとりの持っている
「普通」という状態を
認識していきましょう。