逃げられる人 逃げられない人



施設・事業所の中で、
様々な活動をしているときに、
「嫌」という表現をする人に、
職員は、どんな関わり方をしているでしょうか?

このような表現をした時に、
わがままと取る支援者も多く、
ご本人が、自分の感情を表現できない人が多い中で、
無理を強いられて、
活動をさせられたり、
その人の表現をしているのに、
注意を受けたりする場合もあって、
あなたの関わりを確認する必要があります。

まず、彼らは、
その施設・事業所を利用する時に、
さまざまな「嫌なこと」を持ちつつ、
入所・利用をしているということを、
情報として持ち合わせるべきです。

そのあたりは、
最初から出てくるわけではなく、
実際、利用を始めてから、
ご本人たちもわかることです。

たとえば、
人数が多い
活動の内容が嫌い
嫌な人がいる
うるさい
空間が落ち着かない
などなど、
それが嫌だと表現が
できない人も多くいるのです。

でも、ここに入ったのだからと、
職員からは、
「みんなと一緒に活動するべき」
「集団の動きに合わせるべき」
「スケジュール通りにするべき」
「一人だけに特別はない」
などと、
集団論理が先に立ち、
それが、その人にとって
苦痛であることの理解も得られず、
「嫌」と表現すること自体が、
許されないことが、
当たり前になってはいませんか?

さて、「嫌」の表現には、
どんなものがあるでしょうか?

「嫌だ」と言葉に、
出せればよいのですが、
ほとんどの方はそういう言葉が
出せないでしょうね。

パニックになる。
活動場所に入らない。
トイレなど、そこと違う場所に移動する。
泣く。
職員の手を引っ張る。
離れて歩く。
施設を休む。
ご飯を食べない。
眠れない。

色々な表現をします。

ですから、
その行動の意味はなんだろうと、
職員が考えなければ、
ならないのです。

例えば、逃げ場として、
トイレに行っても、
長く入っているといろいろ言われ、
出てきても、
また、トイレに行く場合、
「さっきも行ったでしょ?」と、
活動の場にいることを
強要するような関わりも
実際にあるのです。

せっかく逃げたのに。

その際、
その場から離れられるという人は、
逃げ出せる人です。

その場でパニックになる人は、
逆にその場から逃げだせない人です。

逃げ出せる人は、
嫌なことがあったその場にいたくないため、
自ら、その場を去ることが出来ます。

こう考えると、
その場を離れられる人の方が、
自立度は高いのかもしれません。
スーッと去る人っていますよね?

その意味もまた、
理解していただきたいのです。
単に引き戻すことが、
よい支援ではないのです。

そして、パニックになると、
それは職員は、
問題行動と位置づけてしまいがちですから、
ここが嫌だ、この活動が嫌だ、など、
「嫌」の表現をしていると言うことを、
思い出すようにしてください。

「嫌」にならない活動を提供されるとか、
「嫌」な時は、
部屋から出ていくことが許されるとか、
利用者一人ひとりの感情にも
寄り添える支援者でいてください。

「嫌」の表現は、
SOSです。

SOSが言えることは、
自立するうえでも
とても大切なことです。

かといって、
いつもいつも、
SOSを言わせているような
活動や施設の運営は、
人権を無視したことにもなりかねません。

彼らの「嫌」の表現に敏感になりましょう。

彼らの行動を観察しましょう。

離れていったな?逃げていったな?
離れられないな?逃げられないな?

そんな基準からも、
何か考えているな?と
感じ取れる職員になっていきましょう。