考えるための質問



知的障害がある人の支援者は、
指示をして、
その通りに動いてもらうことが、
良い支援だと思って、
関わっている人も多いと思いますし、
そこまで思わなくても、
彼らは、指示をしないと動けない人だと
思っている人も多いと思います。

確かに、できないことも
いろいろとありますので、
できるのか、できないのか、
それぞれに確認をしている時間も
ないと思う支援者もいるでしょう。

そんな「手助け」が、多く必要に見えるため、
次々と道筋をつける支援者の
指示通りに動いていれば、
間違わずに事が済むと思っている人も
いることでしょう。

それがどういう意味を持つかまでは、
彼らは考えないかもしれません。

というのは、
今を生きる人であり、
将来予測が難しい人でもあるからです。

支援者の言うとおりにしていると
今現在の「障害」が少なくて済むし、
楽なのは、
知的障害がある人自身にとってもなのです。

でも、
将来をどうするか?
その部分を考えにくい人たちですから、
支援者が、その人の将来を思い描き、
今の支援をするべきなのです。

さて、彼らにも「自立」の視点で
支援をしているとすれば、
なんにでも道筋をつけるのは、
いかがなものでしょうか?

いつも支援者がそばにいるとも限らず、
自分の将来を自分で決めていくためには、
意識していきたいのが、
ご本人が考えることです。

もちろん、最初からできるわけでは
ないかもしれませんが、
彼らは経験することで、
様々なことが出来ていく人です。

ですから、
私たち支援者が、
彼らの考えることにつながるように
支援を組み立ててほしいのです。

その積み重ねで、
彼らは、
何かの場面で気づき、
自分で考え、
前に進めることにつながるのです。

そこで、そんな彼らに対し、
有効な質問を
ご紹介しましょう。

知的障害がある彼らから
質問をされた場合に、
支援者は、どんな返事をしていくか?

質問されたら知っている答えを
言ってしまっている人も多いと思うので、
そうではない返しかたです。

第一段階としては、
支援者から、いくつかのアイデアをだし、
選んでもらう方法です。
「○○アイデアと△△アイデアがあるけど、
どちらにしますか?」

自己選択とも言います。

その際に、メリット・デメリットを伝えたり、
「その他」という項目や、
「自分で考えたことでもOK」というようにして、
選択のスキルも高めます。

そして、次の段階は、
自分で決めてよいことを促す意味で、
質問をします。

「あなたは、どうしたらよいと思いますか?」
「あなたは、何をしたいですか?」
など、支援者に知っていることを教えてほしく、
彼らが質問してきた時に、
逆に質問をして返す方法です。

例えば、
作業中に、
「この商品は、どこに置くの?」
「どこに置くのでしたか?」

給食のときに、
「手を洗ってきていい?」
「どうしたいですか?」

というようなことなのです。
でも、それを自分で判断して、
実行するために
質問をしてくるのです。

やろうとしていることは、
その人の中で、
決まっている事もあります。

また、この場合、
ご自身で決められないこともありますし、
決めたことが間違いの場合も
あるかもしれませんが、
この経験を積むことが、
自分で決めることを促すきっかけになります。

もし、間違ったり、決められなくても、
今は「それでも良い」というスタンスで、
ゆったりと構えておくことです。

彼らは、私たち支援者の顔色を
伺うようなこともしますが、
私たちの表情で、
自分がしていることが、
良いのか悪いのかと判断することもあるので、
経験を増やすためにも、
また、彼らが彼らの人生の主人公になるためにも
私たち支援者側の表情は
自己決定の大切なアイテムになります。

そして、自分で決められた答えが良い場合は、
「そうだね」「その方法はいいね」
など、肯定することで、
自信をつけていただきましょう。

支援者が道筋をつけるだけが、
支援ではありません。
彼らが考えることにも、
支援をしていきましょう。

自立のための
自己選択・自己決定につなげていきましょう。