親と子の意見は表面的に違う



「今日のこと、連絡帳に書かないでね!」
「俺さ、就職したくないんだよ」
「お母さんがスカートはいちゃだめって言っているの」

この言葉に代表されるように、
知的障害がある人は、
親御さんには言えない世界を持っています。

親御さんから見ると、
様々なところに手助けが必要な分、
考え方にも親の意見を中心とした
進め方をしている場合が多く、
明らかに力関係をもって、
親子関係が成り立っている場合も
少なくありません。

洋服
髪形
日常生活の順番
また、施設での過ごし方などまでも、
「ちゃんとやりなさい」
「こうでなければだめなの」
「あなたはできないでしょ?」
という形で、管理している時に、
実は親御さんは、
お子さんのことが心配で心配で
手だし口出しをしているということになるのです。

以前、出会った女性は、
先ほども書いた、
「お母さんがスカートはいちゃだめって言っているの」
という言葉を、
女性職員に打ち明けました。

この方は、
今はもう60を超えているかもしれませんが、
若いころから、お母さんは、
男性に乱暴をされたら困るということで、
スカート禁止だけではなく、
妊娠しないようにと手術を受けさせていました。

これは、親から見たら心配で心配で
当時としては、
苦肉の策だったのだと思います。

今なら虐待にあたります。

ご本人には、
どう映ったことでしょうか?

親が考えていることもわからず、
処置だけされている可能性もあります。

せめてスカートをはきたくても、
「だめ」という言葉で、
買ってももらえないわけですから、
親御さんのいないところで
ぼやくしかない状態なのです。

「俺さ、就職したくないんだよ」
と言った男性は、お父さんが就職を
ものすごく希望していました。

ですから、職員も就職先を探していましたが、
ぼそっと一言言ったのです。

そこで、
その後3者で面談していたのをやめ、
親御さんと、ご本人と別々に
面談をしたところ、
はっきりと親と考え方が違う、
息子さんの考え方だと確信し、
お父さんにもお話をしました。

このあたりも、
するべきことだけを言われ、
その理由が説明されていないために
反発となってしまっているのだと思います。

さて、このように、
親子の意見が違う場合、
親の意見が主流になってしまいがちですが、
実際は、お子さんである、
知的障害がある人の意見が採用されるべきなのです。
ご本人主体ですからね。

ところが、
その辺りをうまく調整できない場合が
多くあると思います。

意見の違いをうまく調整できないのは、
表面的な部分だけを
見ているからではないでしょうか?

このような場合は、
親の想いという真髄まで見ることです。

すると、
そう言っている意味も分かりますし、
彼らがわからない部分を代弁し、
説明することもできます。

よくよく、
意味を理解し、
お互いの方向性を解釈すると、
同じ方向にむいていることも多いのです。

たとえば、
就職させたい親と
就職したくない息子の場合で、
真逆に見えても
就職することが、親は、子のしあわせのためと
思っている場合は、
「子のしあわせ」を主目的に話し合えば、
方向性は固まってくるのです。

どうしても、最初から最後まで、
表面だけを捉えて、
意見が食い違っていると解釈してしまうと、
ぎくしゃくしてしまいますから、
そういう場合は、
目的を合わせ、
親御さんからの「方法の譲歩案」を
出していただくことです。

それを調整するのが、
職業的支援者と言うことになります。

ニーズは何か?
そのための方法は何か?

ここを捉え違えないように、
表面だけのことで、
判断しないように、
じっくりとそれぞれの意見を伺い、
どの方向で、親子の足並みをそろえて、
前に進むのかを
考える視点を持って行きましょう!

もちろん、これを親子だけで考える場合もそうです。
お子さんには、親御さんがこうしたほうが良いと
思っている「理由」を話すことです。
理由がわかれば、方法を考える時に、
お子さんが考えた方法でも
願いが叶うこともあるでしょう。
その時は親の譲歩となります。

いくら、お子さんのためとは言っても、
やりたくないことをすることは苦痛で、
思っている方向には行きにくくなりますので、
お子さんがやりたいと心から思える方法で、
お互いに願うことを実現させていきましょう!