石ころ拾いますか?間違った支援は障害を増やす



以前、重度の方の施設に
異動をして、
施設長として勤務をしはじめた時のお話しです。

その施設では、午前中は作業をし、
午後は、近くの公園にお残歩に行ったり、
室内でゲームや運動をしたり、
ドライブしたり、
そういう中で体力をつけたり、
生活力をつける施設でした。

いわゆる、現在で言う、
生活介護系の施設ですね。

利用者の移動に関する支援については、
バランスが悪く転倒する人もいますし、
職員が抱えて歩く人もいます。
外出の時だけ車いすの方もいて、
様々な支援も
マンツーマンに近い方が何人かいました。

職員たちは、本当にやさしい人たちで、
「福祉職」として、
利用者思いの職員たちでした。

私が異動して間もなくのころ、
ある職員が言ったのです。

「(散歩で出かける時に)
利用者がケガをしないように、
石ころがあったら、拾います!」

すごく自信たっぷりに
言われたと記憶をしています。

外を歩いていて、
石があったら、
それに足を取られて
転んではいけないので、
拾うのだそうです。

たしかに、外の道は、
少し斜めになっていたり、
道路によっては、陥没していたり、
利用者のみなさんが
転んだら大変です。

しかも、転んでけがをしたら、
「事故」という扱いになります。

職員の気持ちは、
わからなくはないのです。

でも、よく考えてみると、
おかしくないですか?

「石があったら拾って歩く」
ということがです。

それは支援とは、言い難いのです。

支援の視点が間違っていますね。

この支援を続けることは
どんなことを引き起こすか?

「石があったら拾う」という
支援者がいるため、
その方は、支援なしでは、
道も歩けないことにもなりかねません。

舗装された道は、
先ほども書きました通り、
さまざまな不具合を
見せます。
施設の近くでは、
支援者が石を拾うかもしれませんが、
他の所は誰が石を拾っているのでしょう?

多分誰も拾っていませんね。

その問題に、
職員は気づいていませんでした。

やさしさゆえの行動だったのです。

ケガをさせたくないために
していたこと。

確かにケガさせてしまう事は
良くないかもしれませんが、
「自立」という観点は
忘れてはいけません。

私の提案は、

「石のよけ方を教えてもらえないだろうか?」

でした。

これなら、ケガもしない。
将来的に、自分で道を歩くという
自立のための支援になる。

職員は、はっ!としたようです。
自分たちのしていることが、
間違いだったとすぐに気づいたようでした。

もちろん、支援の方法は、
すぐに改善しました。

やさしさゆえの行動ではありましたが、
より利用者の支援を多角的に考え、
本来あるべき歩き方に
近い方法にする方が良いと思います。

これは、移動という部分に関しても
ほんの一例です。
彼らが生活する中でできることを
支援者の「やさしさ」という視点で、
なんでもしてしまうために、
彼らができなくなってしまったことは
たくさんあるのです。

ですから、みなさんの支援現場でもありうることです。

なんでも支援者がしてしまう事は、
彼らの障害を増加させることにもつながります。

障害を、今以上増やさないためにも、
自立という視点のためにも、
自分たちがしている支援の質を考えましょう。