作業支援:記憶がなくなる人への6つのポイント



知的障害がある方の中で、
作業の説明もわかり、
複雑な作業ができるのですが、
記憶がなくなるような人には、
いくつかの主要素があると思っています。

まず、
覚えようとして、覚えられない人。
そして、
もともと関心がなく、覚えようとしない人。

もちろん、他の要素もあるかもしれません。

この人たちに、
作業をしていただく上で、
少しでも
自立をしていただくために
6つのポイントに分けて、
書いていきたいと思います。

1.単純な作業を取り入れる

知的に障害がありますので、
記憶の容量は、少ない中で、
複雑な作業は、意味の理解から、
しにくいことは確かです。
やはり、
単純な作業のほうが、覚えます。
人によっては、1工程だけの人もいるでしょう。

1つができたのに、もう一つすると、
できていたものができなくなることもあります。
これを記憶と呼ぶかは定かではないですが、
できなくなる瞬間です。

特に知的に中度・軽度と言われる人だと、
難しい作業をしてもらいたくなるわけです。
でも、記憶に関して、
落ち込む場合もありますので、
単純作業から
覚えることで、体慣らしをしていきます。

ご本人の能力を高めに
見積もりがちになりますので、
わすれてしまうことで、
注意してしまうことにもつながります。
ご本人の状態を、
やり方を忘れる人という認識にし、
単純作業からスタートしてみてください。

2.工程数が多い時は、分割して作業を提供する

もしも、工程数が多い場合は、分割をすることです。
例えば、ボールペンの組み立てであれば、
まずは、第一工程のパーツだけをつける作業を
全てしてしまうというやり方もあります。
その人にとっての分割になります。
どこまで覚えているか?
この、分析をしてください。
そして、その人の記憶の力量より
低い範囲内で、することです。

3.こちらの指示を、繰り返し言葉にしてもらう

私たちが指示をした言葉を、
その人に言葉にしていただくやり方です。
その時に、具体的に言葉を言っていただきます。
「わかってる」や「いつも通りやる」
というような言葉ではありません。

支援者も具体的に説明をし、
できれば、箇条書きのような話し方で、
ご本人もその通りの言葉でオウム返しのように
話すことです。

自分で話すことは、
記憶の積み重ねになりやすいのです。
最初は間違っていた人でも、
記憶ができてくると、
間違わずに言えるようになります。
時間はかかります。

もちろん、やり方そのものが
わからないわけではないので、
いつも同じように説明をしましょう。

4.視覚的な指示書を作る

言葉が有効でない人もいますが、
そういう人には視覚的なヒントを盛り込んだ
指示書を作ります。
写真1枚で、思い出す人もいますので、
ひとりひとり、何がポイントで思い出せるのかを
分析して、それに見合った指示書を作りましょう。
もちろん、指示書を見るのが苦手な人もいますので、
その見極めは必要です。

5.忘れたときに、思い出してもらう時間を作る

「昨日やりましたが、覚えていますか?」
これはうちの利用者の人によく問いかける質問です。

「△△ですね?」
「違いますよ」
「・・・」
「ちょっと考えてみてください」
などと言うこともあります。

でも、この時間が、
実は記憶の蓄積に役立っているようです。
特に、覚える気がない人が、
覚える必要があることを
目の当たりにする瞬間なのかもしれません。

忘れても誰かが答えてくれると思うと、
記憶の蓄積にはならないようです。

「○○でしたっけ?」
何度も同じ作業を繰り返すうちに、
正しい記憶が出てくることもあるので、
その繰り返しは、
ようやく自分のものとなっていくようです。

6.認める

そして、思い出した時や、忘れなかったときに、
「認める」をしていきましょう。
人によっては「ほめる」なのかもしれませんが、
自分は「認める」を中心にしています。

先ほどの、「○○でしたっけ?」などの時に、
「そうですね」
「あっていますよ!」
「覚えていましたね!」
といった感じです。

この会話で、あっていた!がわかり、
記憶することの安心感や必要性などが
わかってくるようです。

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さて、これらのことは、
かなり長い間支援することと思ってください。
もともとが、記憶部分に「障害」がある人なので、
忘れていることに、怒っても仕方のないことです。

支援の仕方によって、
覚えていくことは増えていきますので、
支援者も繰り返し繰り返し、
同じような関わりを進めてください。
1回や2回で記憶できることではないからです。

そして、しばらくやっても効果がないとか、
様々な方法をいろいろ試してみて、
効果を判断いただいたほうが良いと思います。

記憶の蓄積ができれば、
ひとりで、作業ができたり、
支援者が関わる時間も減らせます。
最初は、毎日のように手順の確認から始めます。

また、毎日はおぼてていても、休み明けには
また忘れている可能性もありますので、
支援をいれます。

そういう蓄積で、
ゆくゆくは、一人でも記憶が、
出てくることも増えますよ。

気長に構えて支援をしていきましょう!