支援者は少しくらいできないほうがいい



以前、55名定員の施設長だった時、
グループホームもあり、
作業納品もあり、
なんだかんだで、
施設の中に3名の支援職員と
私だけという状態になった時が
ありました。

当時は、非常勤職員もいない時代で、
雇っている正規職員は9名程度。

3階建の3つのフロアに、
職員が1名ずつという状況で、
利用者は作業をやっていたのですが、
どうしても、
1階にいた職員と、
事務所で話をしなければ
ならないことがあり、
利用者の皆さんにお願いをしたのです。

「私たちは、
今から事務所でお話をするので、
何か困ったことがあったら、
事務所まで来てください。
すぐに駆けつけますから」

事態を理解した、
利用者の皆さん。

作業を、
皆さんだけでやっていたのですが、
皆さんとっては、
緊急事態だったのでしょう。

バタバタと5~6人で走って
事務所まで来て
それぞれが緊急事態を訴え、
私たち職員も作業場に行き、
事なきを得ました。

この出来事は、
アクシデントがあったからこそ、
彼らのエンパワーメントを
見せていただけた事柄でした。

私自身が、
より良き支援にこだわっておりますので、
アクシデントが発生することそのものは
できるだけ避けたいのですが、
施設といえども社会ですから、
このような、
アクシデントも起きますし、
起きたことに対して、
人の持つ力が発揮できることは、
多々あるのです。

それが、職員であろうと、
利用者であろうとです。

彼らがまさかの威力を発揮し、
そのような瞬間に、
自信になることもあります。

また、別な施設でも、
若い支援者の経験のなさが、
利用者の力の発揮どころだったり、
彼らが自分たちで何とかしなければと
思う気持ちが芽生えるシーンがあったり、
さまざまな所で、
支援者ができないことや、
難しいことを
自分たちで何とかしようという力に
結びついていることが
多々見られるのです。

支援者は、自分ができないことを
必死でやっているときがありますよね?

それは、もしかしたら、
彼らの力を知らないからです。

そして、彼らの力を確認することも
していないからではないでしょうか?

お願いしてみてはいかがでしょうか?

利用者の皆さんには、
「職員を信用しては
いけないよ」と伝えている
わが施設ですが、
そう伝えてからの
利用者の皆さんの積極性は、
各所に出ています。

職員も人間ですから
忘れることもありますよね?

彼らも職員がするものと
思っていたことを
職員が忘れてしていない場合に、
自分からやってみたりする
シーンが見られます。

「やってあげようか?」
と助けてくれることも多々あります。

結局、職員は、
彼らができないところを
支援する人間ですから、
できるところは
彼らにしてもらって良いのです。

私たちは、手出し・口出ししすぎ、
お膳立てしすぎなのかもしれません。

少しできないくらいの方が、
彼らは自分たちで何とかしていこう
という力が出てきます。

それに、職員を助けようと
思うことも出てきます。

それは確実に自立につながります。
良かれと思って、
何でも支援者がやっていると、
経験にもなりませんし、
その部分の自立のスキルも得られません。

支援者は少しできないくらいの方が
良いのではないでしょうか?

また、支援者ができることでも
彼らができることであれば、
それはチャンスですから、
経験の場として
提供することもあっても
よいと思いますよ。

もちろん支援者が
そのことをしたくないという
意図でしたら問題です。

経験の場は、
大事です。

少しできないくらいでも
いいのだと思います。
ご自身を責めなくてもよいのです。
自分のできなさは、
彼らの力を引き出せるということと
解釈しましょう!