やりくり支援:わり算が必要な場面の支援



金銭管理と、
やりくり支援をしています。

金銭管理は、
ご存知の方も多いと思いますが、
成年後見や
権利擁護推進事業
といったものを使って、
日常的金銭管理といわれるもので、
具体的には、
利用者の通帳などをあずかって、
1週間ごとなど、お金をおろし、
ご本人に渡していきます。

うちでは、
このサービスを使わず、
金銭管理のために通帳を
預かっている人もいます。

また、やりくり支援は、
日々のお金の使い方や、
将来を見越した時の
お金を貯めることとか、
そのようなやりくりを
支援していることですが、
金銭管理事業でも、
「日々」まではやっていません。

私が関わる人たちは、
社会福祉協議会の金銭管理を
使っている人もいますが、
1週間のやりくりが難しいため、
私が介入し始めたのは、
2015年のことです。

その中では、
様々なことがあったのですが、
今、3名は順調なやりくり支援が
できているところです。

さらに、最近始めた人(4人目)の、
お金を使うことの難しい部分が、
見られましたので、
事例として、2つ、
書きたいと思います。

さて、私たちが日常的に、
何かを買うために、
安いものを比較したり、
通常の使い方を
変更してみたり、
がまんする時もあります。

そんな日常は、
構えて考えることもなく、
ちょっと考えれば、
なんとなくでもわかることが
多くあると思います。

でも、そのスキルは、
知的障害がある人にとって、
ものすごく難しく、
意味不明なようです。

特に計算ができないとか、
イメージすることが難しく、
わからなくなるようです。

ひとつひとつ、やってみて間違って、
説明して、ようやく分かって、
じゃあどうしようか?と
対策が立てられる状況です。

一つ目の事例は、
安いものを買うけど、
それは安くなかったということ。

例えば、お茶を買いたいときに
500mlのペットボトルを
買っていたのです。
これは、飲みやすさかと
思っていたのですが、
よくよく聞いたら、
500mlのほうが安いというのです。

確かに2リットルの金額より安いです。

そこで、割り算や掛け算を使って、
500mlのほうが高いことを
お伝えしたところ、
意味がわかりました。

貯金もなく、借金もあり、
安いものを買うことは
できていましたので、
これからは
2リットルのお茶を
買うことにしました。

また、もう一つの事例は、
1日○○円くらいでやってみると
決めた方がわかりやすいとのことで、
そういうやり方をしていたのですが、
1日の額をオーバーした後の
使い方がわからなくなったようです。

例えば、
1日1000円とします。
最初の日に、
2000円以上使ってしまったら、
残りの日は少しずつ減らす
というのがわからない。

すると、最初にたくさん使ったにもかかわらず、
毎日1000円ずつ使い、
最後の日は、
なくなってしまい、
うろたえます。

「なんで、いうとおりに
していたのになくなったのか?」
という心境でしょうか?

でも、最初にたくさん使ったのと、
毎日1000円の意味がわかっていませんでした。

意味を説明すると、
「じゃあ、毎日言われた金額じゃダメなの?」と
理解できました。

具体的には、途中で、
お米やティッシュなど、
何日分か使うような代物を買うときですね。

一気に出費すると、
その後、残っている金額を
どう使うかというか、
どう扱っていいかがわからない。

そういう状態は、
私たちにもありうることです。

多く使ってしまったら、残りを
給料日までにどれくらいずつ使おうかと、
計算する人もいることでしょう。

その時に使うのが割り算です。

その割り算の意味がわからないことや、
支援者に、
毎日1000円くらい使えると
言われたことだけ、
インプットされていて、
その通りに使った結果、
最後にはお金が無くなってしまったわけです。

この場合は、たくさん買った後に
残った金額を、
再度、割り算を使って、
計算し直して、
1日いくらを決める方法がありますので、
そういうやり方に変更してみました。

このような2つの事例ですが、
ひとり暮らしをして、
常にお金が無くなってしまう
課題が見られる人は、
こういった、初歩的な部分で
つまづいている可能性があります。

やりくり支援をしているところは
まだまだ少ないと思われますが、
相談支援事業所の方は
使いすぎてしまうという
利用者の方がいらっしゃるでしょうし、
企業に勤める知的障害の社員が、
給料がなくなったなどの相談を
受けることもあるかもしれません。

ある意味、このような、
割り算ができないことなどが
原因かもしれません。

何で使っちゃったの?
と問うことは無意味です。

どういう解釈だったのかを聞くと、
その人が、理解していることを
教えてくれます。

私たちと話したことが、
間違って伝わっていた
結果ですから、
それの意味が違うことを教え、
正しい意味を教えるだけでいいのです。

怒っても無駄。
これは、だめだよでは、
やり方がわからないからです。

お金が使えない
お金を使うことに課題がある人の
どこに障害があるかは、
本当に人それぞれです。
障害の部分を見つけて
ピンポイントで支援をしていきましょう。