偽発作と偽薬



ある施設にいたときにその施設の中では、
就職も目指していながらも、
甘えたい気持ちもある利用者の方がいたのです。

どうしても施設の中では、身体的に支援が必要なかったり、
自閉症の方のような支援が必要でない方は、
職員が関わる時間も少なく、
職員を振り向かせたくなる方もいます。

一泊の宿泊行事の際に、その行動が出ました。

「ねえ、見て!発作が起きてる!」

夜寝る時に布団に横になった後、
そういった彼女は、
布団の上であおむけ状態になりながら、
左右に足を動かし、職員を呼びました。

寝る前となれば、職員は、
支援が必要な人にかかりっきりになるのが常。
彼女は何でも一人でできるので、
いわば、ほったらかし状態の時でした。

たまたま、引率した職員が、
新人職員だったということで、
夜遅くに電話があり、
今まで発作などなかった方だったので、
大事を取ってご家族にご連絡をしたところ、
迎えに来てくださるということになりました。

でも、おかしいと思っていた私は、
その後、施設で、彼女にどうやって発作になったのかを聞いたのです。

これは、間違いなく、うそですね。
そう確信しました。
その後ももちろん発作は起きず、
次の年の宿泊行事になったのです。

発作が起きないようにと、
私は、ある仕掛けを作りました。

まず、お守り。
手作りで、「発作が起きないおまじないマスコット人形」を作ってみました。

さらに、「偽薬」です。
これは、発作が起きないためにお菓子のタブレットで、
「AnshinA」と書いた袋も作って、頓服のように紙で包んで、いつ飲むかも書いて、
渡しました。
ご本人には、薬とは言っていません。

「これ飲むと、絶対発作が起きないから。すごく利くからね!」

彼女は夜寝る時に、パジャマに着替えて、
ポケットにお守りマスコットと「AnshinA」を持っていて、
なくさないか確認して、
「いつ飲めばいいの?」を繰り返し聞いてきたそうです。

そして、寝る前にタブレットを食べ、
布団に横になっても、「発作」は起きませんでした。

でも、職員も不安がっていたので、
もし、発作だと言って、足を震わせていたら、
身体を横向きにしてみてと話しておきました。
横向きにすれば足を振るわせることが、難しくなるからです。

さらに、この計画には3年目も続きがあります。
この年、「また発作が起きるかもしれないから、
あのお薬ちょうだい」と言ってきた彼女。

「あれは、一生効くからもう大丈夫。
でも、心配だろうからおまもりは持っていったら?」
とマスコットだけを渡しました。

もちろん発作は起きませんでした。

そういう関わりが多くなったことで、心が満たされたからだと思います。

いつも、支援頻度が高い方に関わる時間が多くなってしまう職員に、
甘えたいところを我慢している彼女でした。
だからこその、迫真の演技でしたが、
「見て!発作が起きてる!」
は、残念ながら、本当の発作ではないとばれちゃいましたね。

それでも、職員と関われる時間が増えたことで、
「発作」もなくなりました。
もちろん、注意はしていません。
職員と関わりを持ちたかった彼女は、
がんばって「表現」していましたからね。

それと、ここで、私は一切うそをついていません。
薬といってないので(笑)
彼女は勝手に薬と思ったようですけどね!

そのあたりで、お互い、笑顔で支援ができたと思っています。

支援頻度が低い方にもやはり、
満足を持っていただくかかわり方が必要だと教えられた一件でした。

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