虐待防止セミナーをしていると、
様々な方から、
今起きている現状だけではなく、
かなり昔のことをお話しいただくことがあります。
「あの時自分は、虐待をしていた。
今はしていないけど・・・」
といった内容で、
そのあとは、
今、同僚の虐待を指摘できないことや
今、部下に教える時に、
こんな自分が言ってよいのかと
思い悩むようです。
極論でいえば、
昔虐待をしていない福祉職員の方が、
少ないと思うのです。
大なり小なり、
叩いたり、暴言を吐くなどを
してきた人がいるのです。
では、なぜしてきたか?
簡単に言ってしまえば、
時代が違ったからではないでしょうか?
社会に合わせるよう知的障害がある人を
管理していた時代です。
私も大学の時に
障害がある人の管理について、授業で習いました。
私たちは指導員と呼ばれ、
施設によっては先生と呼ばれていた時代もありました。
学校では教師が、
叩くことやひとりだけ、
罰を与えることが当たり前の時代に、
指導が中心だった施設でも
同じような流れがありました。
私の知っている施設では、施設長が暴力を振るっても、
何のお咎めもなく当たり前。
親御さんたちも、
「悪いことをしたら叩いてください」という時代です。
全くなかったとは言いにくい。
職場環境も加味していたとは思いますが、
虐待という言葉もなかった時代ではないでしょうか?
背景としても、
知的障害がある人が社会に合わせることを良しとし、
社会に合わないような知的障害がある人は、
指導をされていくような時代だったのです。
家に隠されていることも当たり前。
そのような過去と今を同じように考えても、
あなたに答えは出てこないように思うのです。
ですから、過去に、
今でいう虐待をしてしまった人は、
利用者の皆さんには心から謝りつつも、
その過去があったから、
今、あなたが虐待をしないと宣言できたのだと
思うようになったのだと思うのです。
昔の福祉職員は、
熱血の人も多かったからですし、
自分自身も、教師や親から
叩かれながら育った人も多いのだと思うのです。
こうすることがいいことなのだと、
叩きたくない自分自身に活を入れながら、
叩いていた人もいることでしょう。
だからこそ、過去の見かたを変えましょう。
過去そのものは変わりませんが、
見かたは変えられます。
そういう過去があり、
利用者に大変なことをしたと思える
あなただったからこそ
今のあなたがいるのです。
人は、やり直しができます。
そこまで苦しんでしまったことを
他者に伝えることもできます。
今、あなたの職場で
虐待をしようとしている人を止める時の
思い入れも違うはずです。
相談に乗ることもできます。
過去は、変えられませんが、
過去の自分の行いを利用していいのです。
忘れようとしなくても良いと思います。
そのときは、そうしてしまった自分にも
理由があるのでしょうから。
でも、福祉職として、
これから将来を考えてください。
虐待は、
過去もこれからも、してはいけないことですから、
利用者の皆さんには、
本当に申し訳ないことをしたと思えるあなただからこそ、
虐待を防止する役割ができると思いませんか?
もし、今、あなたの近くの職員が、
虐待をしてしまったのであれば、
あなたと同じ悩みになるかもしれません。
であれば、助けませんか?
あなただからできることを考えましょう。
そして、過去を強みにすることもできると思います。
発信者として、
あなたが学んだことを
ぜひ、後輩たちに伝えていきましょう。
虐待は、してはなりません。
予防から始められることです。
あなたの手で、
ひとつでもふたつでも
虐待になる前に止めていきましょう。