うちの施設の利用者の方の作業は縫製作業です。
現在8人の方が利用されていますが、
縫い物を習ったことがある利用者は、
一人だけです。
そのほかの人は、
様々な会社に勤めたり、
学校卒業後、長い間お家にいて、
過ごしていた方がほとんどです。
さて、この施設に来て、
針に糸を通すところから始まった縫製作業。
「なみ縫い」ができたら、
「かえし縫い」や
「かがり縫い」をします。
また、「玉結び」と「玉止め」もやってみます。
この5つの技術の中で、
できる部分をそれぞれがすることで、
一つの商品を作ります。
おひとりがミシン専門ですが、
ミシンもこの施設に来て覚えたところです。
さて、
ひとつのことが完璧にできるようになった方が、
いらっしゃったので、
もうひとつの技術をお教えすることにしました。
すると、新しい技術もできるのですが、
一連の流れでやると、
先にできていた技術ができなくなる
ということが起きました。
つまり、
「玉結び」→「なみ縫い」→「玉止め」
の、「玉結び」→「なみ縫い」が
できていた方でしたので、
「玉止め」を教えたのです。
すると、「玉止め」もできたので、
一連の流れでやれれば次のステップにあがれるので、
最初の「玉結び」をしていただこうとしたら、
そのやり方がわからなくなり、
できなくなってしまったのです。
これは、ご本人の力量を超えた瞬間ですね。
ですから、この利用者の方には
「玉止め」はしていただかないことにしました。
できることをしていただき、
そのうちまた、
できるかもしれないので、
時期を見て、お教えすることに
なると思います。
また、別な方ですが、
ミシン作業をしている方で、
様々な商品を裁断から仕上げまででき、
売れたら、増産するということを
繰り返していらっしゃる方です。
作るのには、まだ少し難しく、
職員で手直しをしている
「名刺入れ」という
商品(写真)があるのですが、
この商品をきれいに作るためには、
というポイントを再度伝えてみたのです。
すると、
「わかった」とのこと。
同じ指示書を使い、
同じように説明したつもりで、
わかるかなあとも思ったのですが、
わかったようです。
今までわからなかったことが、
繰り返し繰り返し、
様々な商品を作る中で、
コツがつかめたのか、
きちっと意味を理解してくださり、
そのあとに作った商品は、
指示書通りに出来上がっていました。
この方も、最初のころに、
同じことを話したところで、
できなかったわけですが、
この瞬間にできるように
なったということです。
お二人のような事例は、
支援現場ではよくあることだと思います。
できるからもっとできるだろうと
思った時点で、
その方のできる部分を超えてしまう事や、
できないと思っていても、
できることだけ続けていることで、
ようやく、次のステップに入れる瞬間です。
求めすぎず、
彼らのできることに着目することで、
できることが増えていきます。
失敗ばかり続けていると、
もっと別なことも
できなくなったりすることにも
つながってしまいます。
できることを続ける。
すると、彼らの隠れた能力の開花に
つながります。
そんな視点も持ちながら、
支援を楽しみましょう。