力で対峙してはいけない他害への支援



施設の中で、
他害が激しい自閉症の人が、
パニックになり、
利用者をターゲットにして、
向かっていく人は多くいます。

しかも、
その人が嫌いとか、
その人が自分に対して
嫌なことをしたというのではなく、
自分より弱いと見た
利用者に向かっていくのです。

職員も、狙われた利用者が、
けがしないように、
必死で、食い止めようとしているのですが、
その止めようとする力が
大きければ大きいほど、
パニックになっている人の出す力も
さらに大きくなっているよう見受けられます。

ですから、
ひとりでは対応ができなくなり、
職員も二人、三人と増え、
ターゲットになっている利用者も含め、
団子状態になって、
最初のSOSにプラスされたイライラで、
もっと自分の他害行動を
達成したい気持ちが
強くなっているよう見受けられます。

職員が力で、押し返すと、
自閉症の人は、
もっとターゲットに近づきたくなるので、
もっと力が入り、
そのままの勢いで、
他の利用者に行くわけですから、
もっと他害が大きくなります。

なぜそこまでしているのかというと、
その人にとっての
SOSの表現方法が、
他害しかないからです。

押し返す以外に
違う方法はないのでしょうか?

私は、いつも、
そうなってしまった時は、
声をかけて、
椅子に座っていただきます。

椅子に座っていただくことで、
ターゲットと引き離しつつ、
その人だけに支援を入れます。

力じゃ、かなわないですから。

「○○(他害の内容)したいのですね。
わかりました。
では、ここに座わりましょう」

というようなニュアンスで
声をかけてみると、
案外座ってくれる人も多く、
座ってくれて、
ちょっと落ち着いてくれて、
話しができるのです。

その人がしたいことは
止めていないからです。
否定をしてはだめですね。

「嫌なことがあったのね?」
「だから、○○(他害の内容)を
したくなったのですね?」
と確認してみてください。

ふっと力が抜けて、
お話しを聞いてくださる人もいますし、
怒ってることや悲しいことがあったと
表現をしてくれることがあります。

つまり、SOSを伝える
手段の提示をしてみれば、
他害という方法で
表現しなくても
他の方法で表現して
くださることになるのです。

もちろん、私たちは、
彼らが、他害行動をしないようにと
日常の中で彼らの不安などが起きていないかに気を配るべきです。

そして、外的要因も含めて、
パニックが起きてしまうこともありますから、
SOSの提示方法を変更するための支援を
同時にしていきたいところです。

嫌だったことを話してくれた時、
他害じゃない方法で訴えてくれた時に、
「よく表現してくれたね」
「それが嫌だったのね」
「わかったよ」
「ごめんなさいね」
と、その方法で訴えを職員が理解したという方向で
職員も表現することです。

すると、この方法は嫌を訴えるための、
正しい表現なのだと
わかってくれます。

彼らがまるで悪者のように
力技で解決しようとするのは、
よい支援とは言えません。

あなたの支援は、
他害出ない表現をしてもらうことが
最終目標ではないでしょうか?

嫌なことが起きないようにしたり、
嫌なことでも
ご自身がちょっと受け入れられるような
予備的な支援を入れたり、
SOSの表現を他害という方法ではなく、
訴えられ、
それらを受け入れる職員なんだと
その人に理解していただくこと。

全てはあなたの支援によって
できることです。

力技は危険です。
双方けがもしますし、
他の利用者も巻き込まれます。
そして、虐待にもなりやすくなります。

それに、力で押しのけたなれば、
SOSを受け取ったことになりません。
どうやってSOSを表現していただくかも含め、
もう一度、力で関わっている職員はお考えください。

穏やかな時から、
SOSの表現方法の変更は始まります。

「今度嫌なことがあったら、
△△という方法で、
職員に教えてくださいね?」など、
SOSの方法も具体的に
伝えておき、嫌なことが起きた時は
支援を入れつつ表現を促しましょう。

そして、他害ではない表現方法が
身につけられるように
支援していきましょう。