要求は具体的な言葉を使えるよう支援する



知的障害がある人が、
何かを支援者に欲する時に、
支援者は、
その人のなんらかの表現で、
何をしてほしいのかがわかり、
単語も言っていないのに、
何やら要求が通るというシーンは
よくあることです。

「ねえ」といっただけで、
「はい、お水がほしいのね?」
のように、
予測ができる支援者の能力は
素晴らしいのですが、
簡単にわかりすぎてしまうのは、
果たして本当に良いのでしょうか?

言葉がない人でも、ジェスチャーをしつつ、
要求をしたり、
言葉がある人は、相手に分かるような話ができたり、
言葉を獲得できるのであれば、
言葉を使えるようにした方が、
相手には伝わります。

もちろん、無理やり覚えるよう
言っているのではありません。
できるのであればという話です。

支援者は一緒にいることも多いので、
わかることは多々あると思いますが、
今後、常にあなたと一緒にいるだけではなく、
初めて会う人とも同じように、
「ねえ」だけで通じるわけではありません。

支援を求める主体が、
自分の要求をできるだけ正確に近い形で
要求できた方が、
ニーズをくみ取ってもらえることにもつながりますが、
もし、要求をうまく伝えられずに、
支援者もうまくくみ取ることができなかった場合、
その人の要求通りの支援はできなくなりますし、
通らない要求に、
あきらめることもまた主流となってしまった場合は、
本来のご本人主体とはかけ離れたものになってしまうのです。

意思疎通ができていない状態ですね。

結局は、支援者主体に事が運んでしまい、
支援者の言われるがままに
我慢することにもなってしまうのでは
ないでしょうか?

この、言葉を使うことは、今支援をしている
あなたの役割としてあることなのですが、
実際に使いこなすのは、
もしかしたら、
別な支援者の時に役立つスキルなのかもしれません。

別な支援者とも意思疎通をより良くするために、
そして、あなたに対しても
もっと具体的な要求ができるようになる為に、
表現を今よりも具体的にできるようにする支援を
していきましょう。

これは、支援者が冷たい訳ではありません。
「そんなことさせてかわいそう」とも
思わなくてよいのです。

何でも支援者がやることが、支援ではないのです。

彼らに、自分の欲していることを
言葉にしていただいたり、
よりわかる表現にしていただき、
誰とでも、自分の要求が通る経験を
たくさん積んで頂くことですし、
そのための支援です。

そして、様々な支援者に変わっても
できる範囲で自分の要求を
伝えられる人になっていただきましょう。

曖昧な言葉で、
意思疎通ができたと思わせているのは支援者です。

彼らの世界を広げるためにも、
言葉の出し方についても支援をしてください。

もちろん、絵カードや写真などで
より通じるコミュニケーションをしても良いのです。
牛乳がほしいときは、
牛乳の絵カードを見せるというような方法です。

もうすこし、具体的に
欲しているものを
会話の中に
出して伝えるための支援を書きましょう。

「ねえ」「あのさー」などと
といわれた時に、
何を欲しているのかを
あなたならわかることもあるでしょうから、
それを一緒に言うことです。

「牛乳ください」
「ケガをしました」
「眠いです」
「トイレに行きたい」
などなど、
言葉の置き換えをしつつ、
ご本人に話していただきます。

そして、また同じ場面の時には
「そういう時は何と言いますか?」
と聞いてみましょう。

わからなければ繰り返し、
言葉の置き換えをし、
ここでは怒ってはなりません。

時間がかかります。

そこを根気よく、
ゆっくりじっくり
言葉を伝え言葉を獲得していただきましょう。

自分自身で
支援者に促されなくても言える日はきますし、
今よりは、的確に要求を伝えられるようになります。

いつも忘れられがちですが、
大切な支援の部類に入れ、
きめ細やかに
伝えていきましょう。