その人は、刑事ドラマを見たらしく、
「悪い奴はみんなその場で
射殺されればいいんだ!
そうすれば裁判なんかで
時間もかからないし。
そうすればいいんだよ!」
と言っていました。
自閉症の人が、
このような発言をすることがあります。
頭ごなしに、
「何言ってるの?」
「やめなさい!」
など言っても、
彼らには私たち支援者の考えは
伝わりません。
そういう風に言われることで、
自分自身は否定されたような感覚になり、
余計にイライラしたり、
パニックになったり
することもあります。
その場合は、
「そう思ったんだね?」
など、その人が考えていることは
理解したよと
意思表示をしてください。
さて、先ほどの人には、
そのあとに、
容疑者っていう意味や、
警察も間違うことがあることや、
裁判で決まる話をしたのですが、
納得しなかったようです。
そこで、イメージがわくように、
「たとえば、私とかあなたが、
誰かにいきなり殴られたとするよね?
そのことに頭にきて、
殴ってきた人を殴り返した瞬間に、
警察が見ていて、
私とかあなたが射殺されたらどうだろう?」
と聞いてみました。
「それは困る」
「だから裁判があるのか」
と言っていましたね。
たぶんですが、
場面を想像できたのだと思います。
最初に殴ってきたのは、相手なのに、
こっちが悪者になる瞬間があるということを。
「だから、容疑者っていうんだよ。
警察が殺しちゃうんじゃなくて、
裁判があるし、
弁護士さんがいるんだよね」
そこまで来るとようやく納得して、
「あー納得した」
と言ってくれました。
このような、
いきなりの反社会的と思われるような
会話はよくあることです。
会話の表面的なところだけ見ると、
なんてひどいことを言っているのだと
思いがちですが、
人と人の関係性や、
社会の動きをよくわからない人もいますし、
世の中の悪をなくしたいという
気持ちの人も多くいるよう見受けられます。
もちろん、自分が嫌いなシーンを見たり、
不愉快なことが起きた時も
「自分がみんなを殺してやる」など、
言ったりもします。
この、「殺す」「やっつける」
などは、どこからか取ってきた
言葉であることが多いようです。
特に、インターネット上で、
流れてくる言葉を使っているようです。
ですから、その言葉に過度に反応するよりも、
どうしてそういう気持ちになったのかを
探るほうが解決が早い時もあります。
それくらい嫌な気持ちに
なったということを
理解していきましょう。
そして、今後イライラが出た場合に
どうやって解決をするか?
ということもいっしょに考えていくことです。
ひとりで考えるという作業は、
「無理」「できない」となることもありますが、
イライラしているときに話すことは、
さらに効果がなく、
気持ちが安定しているときに、
今度、もし嫌なことが起きた時場合は、
どうやってやり過ごすかを
相談をしてみることもおすすめです。
先ほどの場合は、
TVの中の話で、現実的に、
目の前で起きているわけでもなく、
自分がするというより、
誰か(この場合は警察)に
任せると言っているので、
まだいいのですが、
私たち支援者側が、
様々な反社会的な会話に
あわてないことです。
そういう思考になりやすい人ですから、
先ほども書きましたように、
安定しているときから、
対処を考える話をしておくべきです。
自閉症の人たちは
いきなり経験することに
なれていません。
だから、予測できることを
話しておくことです。
たとえば、「明日は絶対に晴れて、
絶対に出かける!」と思い込みます。
雨が降るかもしれないね。
雨が降ったら中止だね。
そういう予告をしておくということは
普段から有効なのです。
論理的にはそれと一緒です。
今度、嫌なことが起きたら、
警察に任せようね。
など、先に行動の予行練習的な話を
しておくということです。
経験してわかる人たちですが、
インターネットなどを通し、
それが正しいと思い込むことも
ある人たちです。
こちら側も平常心で対応してください。
そして、どうしてそう思ったのか、
どうやったら、その気持ちを
静めることができるか、
そんな視点で、考えていきましょう。