自閉症支援:言葉合わせをしよう



自閉症の人たちの言葉について、
支援者が思っている言葉の意味と、
彼らの思っている言葉の意味が
違う場合があります。

たとえば、Aを取ってくださいと頼むと、
Bを取ったり。

Cをするよう言うと、
Dをしたり。

そういったことが、
起りえます。

また、支援者が具体的な話を
しなかった場合に、
その意味の解釈が、
曖昧になり、
間違った解釈をしてしまう事も
あるでしょう。

さて、先日、電車の中で、
動き回ってじっとできない
幼稚園の男の子と
お母さんが座っていました。

そのお母さんが、息子さんに、
「正しく座っていてほしいのだけど、
正しく座るってどういう座り方だか知ってる?」
と聞いていました。

男の子は、少し考えて、
姿勢で表していました。

「そうだね。
そういう座り方だね」

そんな会話をしたことで、
男の子は、お母さんの言う「正しい座り方」を
再確認できました。

そして、少しの間、
「正しい座り方」ができていました。

このような
「言葉合わせ」をしていない場合があるのです。

たとえば、長年施設職員が、
他の利用者にも通じる言葉で、
当たり前だと思って使っていた言葉が、
その自閉症の人には、
実はわかっておらず、
職員が言ったことをしないので、
「問題行動だ!」
と、解釈されていた人もいます。

よく私がセミナーでお話しするのは、
「ビール」と「お酒」の事例です。
冷蔵庫に「ビール」しか入っていない状態で、
お母さんが、
「お父さんにお酒を持って行ってね」と
娘さんに話したところ、
何も持って行けず、
「ビールを持って行ってね」と話すと
「ビール」を持って行くという事例です。

お母さんにしてみたら、「ビール」も
「お酒」も同じものですが、
ご本人にとっては、全く別物なのです。

このような「言葉合わせ」ができていないと、
お互いのコミュニケーションに
不都合が生じるわけです。

まず、
あなたの言葉が通じていないような場合は、
相手の自閉症の人が、
解釈が違っている可能性があるので、
もう一度、言葉合わせから始めましょう。

あなたの話す言葉の意味と、
自閉症に人が考えている言葉の意味を
合わせることは、
安全な生活をする上でも
大切なことです。

物の名前だけではなく、
行動などもお互いに考えていることを
合わせておくことです。

たとえば、
ひとりで建物の二階に行くときに、
「どこの階段」を使っていくか等もです。
そうすることで、
迷子になりにくくなったりもしますね。

曖昧な言葉を使わないことも、
彼らにとって重要です。

つねに、自分の発している言葉が、
その方に通じる言葉なのかを
検証しつつ、
会話を合わせたい所なのです。

あなたの言葉と、
相手の言葉が違う場合は、
最初は、相手の言葉に合わせる場合もありますが、
最終的には、
世の中で通じる言葉で、
会話をすることが、
一般の人とも話ができる一端となります。

ですから、言葉の変更という過程を
経る必要があります。

まずは、彼らがどんな意味でとっているかを、
把握してみてください。
そこから、「それはこの言葉を使っていこうと促していく形になります。

この時に
怒っても彼らはわかりません。
正しいことを教えていくのは、
自閉症の人への支援の基本となりますので、
使うべき言葉や、その意味を伝えていきましょう。

(過去の参考ブログ)
「自閉症支援:ものの表現は具体的に」

自閉症支援:「ちょっとここで待ってて」は、だめな言葉