相手の立場になって考えるという言葉は、
障害がある人の支援者の間では、
ものすごくよく使う言葉です。
支援者として、
当然であるべきと思われ、
この精神に従って、
支援をしているという人は
多くいると思います。
では、この言葉の意味は、
全ての人が、
同じでしょうか?
同じではないと思います。
ですから、ニーズが取れていなかったり、
ご本人が望む支援を
得られていないこともあります。
相手の立場とは、なんでしょう?
知的障害がある人たちは、
お一人おひとりは違いますので、
立場というのは、
人数の分だけあります。
そして、その人自身の人生や
今までの経験。
障害の状況、
そして、その人の常識。
その人の立場で、物を考えるというのは、
そういう、その人を形成してきた物すべての中で
できるだけあなたの常識を前面に出さずに、
まずは考えるとことです。
そこの施設にいる状況はいかがでしょうか?
なぜあなたの施設にいるのでしょうか?
働きたくないというような
その人の意見が出てきたときに、
なぜそう思っているのだろうと、
意味を理解しようとしていますか?
そのような気持ちを
まず否定していませんか?
たとえば、
相手の立場で考えるといいつつ、
こんなことはありませんか?
相手の考え方ややりたいことが、
間違っていると判断してしまう。
だから、相手の立場で考えみたら、
間違ったままで生活を
させるわけにはいかない。
間違うと、
その人の人生が
良くない方向だろうから、
自分の常識で考える生活の方が、
あの人の為になる。
と、言う論理。
例えば、
お金が手元にあると、
すぐに使ってしまう人。
だから、これは、
支援者が全部管理していくべきだと
即決してしまうというようなことです。
その人の立場で考えている。
その人のこれからの人生のためにと考えている。
文字の上から見れば、
合っていると思われるようなことも、
別な角度から見たら、
間違った視点から
考えていることになっていませんか?
相手の立場で考えるというのは、
その人の生活そのものに対して
自分の意見も持たず、
こういう人生の人なのだと
受け入れるところからです。
その人の生活を受け入れずに、
今の生活ではない方が、
その人がより良い生活になるとか、
自立になるとか考えるような
スタート地点にすることが、
まちがいのもとになります。
その人の生活を
まずは、知り、
その生活である意味(理由)を知り、
そして、
理解する。
その上で、
今の生活や
できることやできないことなどを
もとにして、
そういう生活をしている人に、
その人らしい生活や
その人が納得する生活を
していくことに対して、
その人の意向を入れつつ
どんな支援ができるかを考えることです。
ご自身のことを話せない人もいますし、
私たちはその人の立場で
物事を考えることをする時となるのです。
例えばひとつのことを
するかしないか考えていく時にも、
自分自身に様々な質問を
投げかけてみましょう。
・こういう障害だからできないかなあ?
・でも、あの時、できていたから、
自分でできるかなあ?
・ご自分ではできるかもしれないけど、
その他の生活のもろもろを考えたら
ここはやらないという選択もあるかなあ?
・ご本人にはできることだけど
やりたいのかなあ?
・それをやっているサービス事業者とか、
家電を買えば、
他のことが
時間短縮になってできるかなあ?
・いや、店で○○を買って急場を
しのいだ方がいいか?
など、一つのことをするだけでも、
色々な方面から考えて行くことです。
そこに、
相手の立場と言うことを入れ込みつつです。
その人の生活丸ごとを受け入れて、
様々な角度で考え、
今目の前のことだけではなく、
生活の中での不具合にならないような
トータルコーディネートのような
イメージなのです。
相手の考えが一番です。
あなたの考えは、後回しです。
あなたの常識範囲内は
想定できないような、
生活だとしても、
「わかるよ。そうだよね。そうなっちゃうよね」
と、思える自分になることです。
でも、相手も間違っていて
困っている場合もありますから、
相手のどこに障害があるのかを見極め、
力量にも合わせます。
ご本人の力だけではなく、
人や物も使います。
アドバイスすることもあるかもしれませんし、
メリットデメリットを
お話しすることも出てくるでしょう。
それらの支援のスピードは、
ご本人に合わせます。
急にしなければならないこともありますし、
ゆっくり時間をかけることもあります。
そして、その人の力量の中ですることで、
その人ががんばって、がんばって、
することではないのです。
できることの中でやる。
そこが基本です。
全て、
相手の立場やこれからのことを
考えてすることです。
あなたの「こうするべきだ」という理想のために
彼らが動くことではありません。
相手の立場を考えた支援は、
まず、丸ごとその人の生活を
受け入れるところから、
その人を批判することなく、
自分の常識と思っていることを
押し付けるでもなく、
社会の常識に翻弄されず。
スタートを間違わないこと。
そして、支援の途中も
自分は相手の立場になっているかと
見直すことの繰り返しです。
もしかしたら、
ご自身の「支援とは」を
もう一度考え直すところから
始めることなのかもしれません。