人の名前は、小さい頃は、
「くん」や「ちゃん」をつけて呼ばれ、
どこかの時点で、
「さん」づけて呼ばれるようになります。
最近は、小学校でも「さん」で
呼ばれるようになったところもありますが、
知的障害者支援事業所でも、
この「くんちゃん呼び」の課題を、
未だ言われているところです。
各事業所が、
この呼び名のことで、
職員の統一もできず、
悩んでいらっしゃることもあるようです。
小さいお子さんであれば、
「くんちゃん呼び」は良いとしても、
大人の施設(18歳以上)の施設は、
ぜったいに「さん付け」で、
名字で言うべきです。
大人の世界だからです。
もちろん例外はあるとしても、
基本は「名字+さん」です。
その時に、出てくるのが、
下の名前で呼んでいたので、
名字がわからないからダメだという
職員の解釈です。
また、信頼関係を得るために等、
理由にすべきでない理由を
あげる職員が多くいます。
たしかに、
下の名前に「くん」や
「ちゃん」を付けますから、
名字の認識が、あまりない方がいます。
特に知的重度の人は、
その傾向が強いと思います。
「くんちゃん呼び」にしないと、
信頼関係が保てないなど、
言っている時点で本末転倒です。
特別支援学校の高等部では、
下の名前と「くん」「ちゃん」で
呼ばれている場合もありますが、
そういう環境は誰でも通る道ですから、
そこに固執することはありません。
もちろん、親御さんが大人になっても
下の名前で呼びますから、
この課題は、支援施設の課題で、
親御さんのせいではありませんから
間違いのないようにしてください。
では、そんな知的障害がある方にも
自分の名字を認識していただくための
手立てを「例」として書いていきたいと思います。
モデルを
「山田あおいちゃん」にしましょう。
彼女は、最重度の手帳を持っているとします。
今まで、
親も教師も
「あおいちゃん」と呼んでいましたので、
「あおいちゃん」と呼べば、
振り向くなどの反応をすることができます。
さて、支援者が、
「山田さん」と呼んだとします。
反応はないかもしれません。
何のことを言っているのかも
わからないかもしれません。
そんな「山田あおいさん」には、
フルネームで呼びましょう。
「やまだあおいさん!」
この時彼女は、
「山田」では反応しない可能性もありますが、
「あおいさん」には、反応すると思います。
実は、「くん」「ちゃん」「さん」に
反応しているわけではなく、
名前に反応をしているので、
呼称は、個人の認識にあまり影響はないのです。
ですから、ここから、支援者は、
かならず、「フルネーム+さん」で
呼ぶようにしてみてください。
そして、この状態で、
しばらく続けてください。
これで、自分の名前を認識してくるので、
しばらくこの呼び方を続けた後、
「山田さん」と呼んでみてください。
反応があったら、
「山田さん」を認識したということです。
そこから、次は、
「あおいさん」を抜いてみてください。
抜いても反応があるようだったら完璧ですが、
まだ不安定要素があるようでしたら、
「山田さん」「あおいさん」のように、
交互に読んでみたり、
「山田あおいさん」と言ってみたりして、
「山田」という名前を認識できるようにします。
これは人によって、
もともと全く認識していない人もいますので
時間のかかり方は、それぞれです。
「くんちゃん呼び」でないと、
わからないのではありません。
そういう体験が極端に少ないだけです。
支援によって、
名前も覚えます。
だって、もともとも、
下の名前だけで、
わかったわけですから。
「わからないから、
くんちゃん呼びをしているんだ」
という支援者もいますが、
そんなことはありません。
ここに書いた例はほんの一例です。
その人に合わせた、やり方はあります。
それは、現場で試してみて、
名字で分かるように、
そして、「さん付け」にも
慣れていただきましょう。
そして、大人の施設であれば、
特別な理由がない限り、
「苗字+さん」が当たり前になっているように、
していきましょう。