知的障害者の治具は試行錯誤の中で作ろう



作業など、知的障害がある方の力を、
もっと発揮できるために必要なのが、
「冶具」です。

これは、その人の動きによって、
何をプラスしたら、
今以上に、その人の力が
発揮できるかを考えて用意をします。

すると、10まで数えることが
できなかった人が、
10個の数えをできるようになったり、

何種類もの袋詰めができなかった人が、
できるようになったり、

方向を間違って入れていた人が、
正しい方向で入れられるようになったり、

うちではミシンがけをしますが、
それがまっすぐ縫うことができるようになったりします。

もう少し詳しく言うと、
物をマスの中における人は、
1・2・3と数が数えられなくても、
冶具の仕様によって、
数えができるということになるのです。

このように、
知的障害の皆さんができないことを
職員が代理で作業を続けたり、
必ず職員が隣にいないとできない状態にするのではなく、
冶具の力を借りて、
ひとりで作業をできるようにするためのものです。

その時に大事なのは、
利用者の方、おひとりおひとりの
「できること」に着目することです。

例えば10までの数字を言えなくても、
そこに物を置くことができる人は、
たくさんいます。
その「できること」にも着目するのです。

さて、この冶具ですが、
ひとりの人にうまく使えても、
同じものを別な人にうまく使えるとは
限らないものです。

ですから、
10個の数えの冶具を例にとると、
平面のマスだけで使える人もいれば、
卵のケースのような立体的なものの方が、
より一人で作業できる人と、
形や大きさなど、
気にかけるところがあります。

それは、まず、一つ、
簡易な材料で作ってみることから始まります。

まず作ってみたら、必ず複数の職員が、
実際にやってみることです。
その利用者が左利きなら左利きとして、
体験してみることです。
不具合があったら、その時点で直します。

その後、ご本人に体験していただきましょう。
期待できそうになければ、最初からやり直しですね。
でも、少しでも良い方に反応があったのであれば、
効果は期待できます。

ここから、改善をしていきます。
使ったほうがいいとわかっていますので、
平面なのか立体的なのか、
大きさは?などなど、
その作業に合わせ、
やっているご本人の反応も見ながら、
作り替えをしていくのです。

最初からうまく行くはずがありません。
段々に良くなってきます。

こうしてそれなりの形になったら、
本格的なものを作ってみましょう。
強度を持っているものにします。
木材でつくる場合やプラスチックでつくるなど、
しばらくの間使えるものにします。

そして他の人にも試すことになります。

このように冶具は、
様々な試行錯誤の中で作られるものです。
先ほども申しあげましたように、
最初からうまく行くと思わないことです。

せっかく作ったから使ってよ!と、
職員が、その道具に固執してはいけません。
あくまでも、その利用者の方に合わせるものです。

また、やってしまいがちなのが、
長い間使っていると不具合が出てきたのに、
そのままの状態で使っていることです。

これは、かえって、
不良を作ったりしてしまう結果になりますので、
不具合があると思ったら直すべきですね。

冶具を使ったことがない事業所さんはぜひ、
治具の開発をしてみてください。

こういうことで、簡単に作業料が上がったりもしますし、
結果的に工賃が上がります。

こんなことくらいでと思わず、
こういうものを開発するのも
支援と思ってください。

利用者の方が使って、
作業がしやすくなった時などは、
感動してしまうと思いますよ!
この仕事、やっててよかった!って思うことでしょう。
ぜひ、チャレンジしてみてくださいね。