2017年7月ニュースレター:施設事故を起こさぬために



2017年7月13日
送迎車の中に利用者の人を
6時間放置状態にし、
熱中症で亡くなったという
事故がおきました。

このことを、
SNSを通し、
ニュースの拡散を行った人も多いと思います。

あり得ないことだ
プロ意識が足りない
この日だけのことではないだろう?
命をどう捉えているのだ?
など、
みなさん、怒りをあらわになさっていました。

当然の感情でしょうし、
知的障害がある人の支援者であれば、
なぜ防げなかったのかと思うところでしょう。

亡くなった方には、
ご冥福をお祈りいたします。
二度と起こしてはならない事故です。

ですから、このことを教訓に、
今回、施設の抱える課題について、
考えていきたいと思います。

さて、
本当にありえないことなのか?というと、
これは氷山の一角であり、
どこの事業所でも起きうる事故で、
もうすでに、
起きていて、
何分か後に気づいて、
事故にならなかった施設も
多いのではないかと思っています。

連絡
報告
相談
よく言うことです。
するべきと言うこともわかっています。

これが機能しなかったと
言うことのようですが、
そのような施設が
ほとんどなのではないでしょうか?

たとえばの例ですが、
その日出席予定だった人をお迎えに行き、
送迎車に乗って施設まできたかどうかは、
その朝、送迎に行った人しかわかりません。

朝の送迎ステーション場で、
お母さんがいらっしゃっていて、
「今日休みます」
などと言われることもあります。

そのまま、「休みの人」を書き入れるべき
情報ボードに、利用者受入れの忙しさのあまり
休みと書き入れなかったと言うことが、
いつも行われている施設であれば、
「出席のはずだけどいない」
「情報ボードにも書いてないけど、
いないのだから、休み」
と思い込むことでしょう。

その時に、
「そんなことはないだろう?来ているだろう?」
と思う確認は
しない職員のほうが
多いのではないでしょうか?

いない=休みだろう。
休みの連絡は入っていなくても、
いないのだから休み。

と言うことが、ありうるわけです。

となれば、
今回のようなケースでも、
朝、施設に入ってこなかったから、
休みなのかな?と思い、
給食が余っていようと、
発注ミスかと思い、
朝からいないのだから、
休みなんだよね?
と思い込むことなど、
簡単なのです。

まさか、車から降ろさなかったとは
だれも思わず、
運転手も、送迎車の中には
誰もいなかったような気になれば、
施設の中にひとりで入ったろうと
思い込むのではないでしょうか?

つまり、
あり得ないと思わないことです。
ありうるのです。

プロ意識とか、
やる気とか、
そういうものをたとえ兼ね備えた人であっても、
ヒューマンエラーは起きるのです。

そのエラーを、いかに少なくできるか?
なのです。

どの施設も、
送迎車から降ろさないことはないと
思い込んでいるから事故が起き、
来ているのに、
施設の中にいないという状態は
考えにくいので、
休みなのだろうと思い込む日常は
多数の施設で起きていることでしょう。

それで、ただ単に、
事故が起きなかっただけです。

見ていない所での、
利用者の人のけがもそうです。

なぜここで?と思うことは
多々あるのです。

職員のやる気や
プロ意識で防げるものではないのですし、
あの人だから大丈夫という安心感は、
この場合、逆に悪となります。

では、どうすれば、
事故は起きなくなるのか?
あれ?って思ったことを
言葉にして、
確認し合えるのか?

なにがあれば、
利用者の安心の日常が得られるのか?

あり得ないのではなく、
ありうるのです。
自分は(自分の所は)大丈夫と思わないことです。
たまたま、事故がなかっただけです。

では、あなたの施設で、
このような事故が、
今後起きないようにするには
何をすればよいでしょうか?

今まで事故が起きていないから
そのままでもよいかもしれませんが、
より確実に確認できるために、
何か変更したほうが良いことが
あるかもしれません。

どのポイントで、
今起きている状況をどう解釈して判断するかを
決めておくことが良いと思います。

過重なシステム強化よりも、
少し、緩やかな方がよりわかりやすく
シンプルになって
事故が起きにくくなることもあり得ますし、
その事業所によって、
するべきことは違うと思われます。

もう、お分かりだと思いますが、
システムなのです。

事故は、人の気持ちの強さで
防ぐものではありません。

そんな確認、
誰でもやってるだろう?という常識も
通じません。

点呼の仕方
記録の仕方
情報共有の仕方
など、その事業所のやりやすい形で
することなのです。

「その職員」がミスをすると、
「その職員」が悪者になり、
「その職員」が辞めれば何とかなると思い込むのは、
まちがいですし、
「その職員」でも、できるシステムにすることです。

事故は防ぐものです。

あなたの施設でも、
自分の所も起きると思って、
対策を立てましょう。

ちなみに、
送迎車の事故はこのほかにも、
車いすごと、昇降機から落ちて、
利用者の人が亡くなったり、
パニックで、
ガラスを割ってしまったり、
ドアで手を挟んだり、
荷物の、朝からの放置などもありますし、
他車との交通事故も相当数起きています。

送迎が必須の施設は多く、
1施設で何台も送迎車を抱えるところもあります。

そして、この話は送迎だけの問題ではありません。
利用者の人が、
職員の確認できる範疇から不在となることなどは、
多くの職員が経験しているのではないでしょうか?

一瞬見失う。

どうすれば防げるのか?
この事故は、
自分の所で起きるかもしれない事故だったと
解釈できるか?

あり得ないからとか、
送迎がないからと、
対岸の火事と思わないことです。

人任せにせずに、
自分たちは何ができるのか考え、
自分の所で事故を起こさないための
システムを強化すべきことなのです。

そして、これから入ってくる職員にも
伝え続けることです。

より良い支援のための改善は、
実行しなければなりません。

亡くなった利用者の方には、
ご冥福を祈りいたします。