送迎車を使うことから生まれる課題



ひとりで施設などに通うことができない
知的障害者の皆さんに対して、
送迎というサービスをすることは、
今やほぼ当然のものとなっており、
施設を探すうえでも、
送迎があるところを探すのが、
当たり前と思われている親御さんも
いらっしゃるのではないでしょうか?

親としても、
家の近くまで送迎車が来てくれたら、
助かりますし、
乗ってしまえば、安心して、
もう自分の時間になります。
働く親御さんにとっても、
ありがたい存在だと思います。

ひとりで通うとなれば、
施設につくまでも心配ですし、
ヘルパーさんもなかなか見つかりませんし、
施設の送迎を頼りたくなる気持ちはわかります。

さて、この送迎ですが、
いくつかの課題があります。

お子さんが
ひとりで交通機関を使えない状態で、
誰かがついていなければ、
通えないという状態の時に、
施設を探すわけですから、
「うちの子はできない」
というイメージですよね?

そこで、入れる施設だとしても
送迎車の席が空いていない場合、
先に送迎車を利用している人がいる状態では、
あなたは
その施設を選ばないかもしれません。

送迎は、1度使い始めると
安心しきってしまうのはわかるのですが、
これは、定員有限のサービスになりますから、
あなた以外に使いたい人もいるのです。

もし、送迎が不要になったときに、
送迎車は利用しませんと
いえることもありだと思うのです。

ほぼほぼ、そういう人は、
いらっしゃらないのですが、
あなたが、施設探しで苦労したように、
これから探す人も苦労するわけです。

ですから、一生の特権とは
思わないでいただきたいのです。

もちろん、
送迎車に乗るのをやめると言うことではないにしても、
あなたと同じように
送迎車を利用したく、
困っている人は他にもいることを
知ってほしいのです。

知ることで、
何かが始まるわけです。

自分の子供が休む時や
長期的に休む時など、
他の人に1席ゆずってもよいですし、
必要な人に権利を譲っても良いと思うのです。

そのあたりは施設とも相談でしょうけど、
利用している権利を独占していない限り、
いろいろな可能性がありますから、
送迎を利用したくてしていない人のことも
考えてみてください。

助け合い。
そんなイメージがないことが
今の現状なのではないでしょうか?

そして、送迎車は、
自立をそぐもの言う部分もあることを
念頭に入れておいてください。

特に学校の時に
送迎を使っていて、
卒業の時に、
就職や就労系施設に行くことになった場合、
まさかの自力通所となります。

知的障害がある人は経験することが
成長を促すきっかけになることもあり、
交通機関を使ったことがない人が、
明日から交通機関を使えるかというと、
そうではないですよね?

ですから、一定期間、
親なりヘルパーを使って、
通所を支援していただく機会を
作っておくことなのです。

また、
家と施設の中だけの往復で、
経験が増えないことが、
将来にどんな影響となるかと
想像をしてみてください。

経験というのは、
やはり小さいうちからするのと、
大きくなってからするのとでは、
違いとなります。

経験させようとしているわけでもないにしても、
毎日の中で、街の中に繰り出すことが、
その子の経験となるのです。

街を通らない子は、
大きくなってから、
いざ街に出ようとしても、
不安材料の方が大きくなることでしょう。

毎日、
社会と触れることで分かることもあるので、
送迎車に乗ってしまうと、
せっかく経験できることは、
経験できないことにもなりかねません。

親御さんのご苦労は、わかります。

私も送迎車を運転していた時期もありますし、
送迎車で、半数以上の人を
送迎していた施設の
施設長だった時もあります。

だからこそ思うことは、
彼らの人生や自立です。

家と施設の往復で、
町を通り抜けていくとき、
彼らの存在すら知らない人たちは
関心も寄せません。

街の中で存在もない彼らの、
今後を考えた時に、
日常の中での
彼らが交通機関を使って
施設に通うことは、
街を創る役目になるのではないかとも思うのです。

ご本人の自立と、
ご本人が存在する街づくりと、
同時にして行けるよう、
大変にならない程度に、
送迎ではない選択肢で、
施設等に通うこともまた、
あっても良いのではないでしょうか?

将来の自立や就職のために、
今からするべきことがあることなど、
多角的に、想像をしてみてください。

ご本人の人生ですから、
送迎車というものを使う意味もありますし、
使わない意味もあります。

それは、ご本人には選びにくい選択だと思います。
親御さんのご都合などもありますからね。

ヘルパーなども充実をしてきていますから、
ご家族だけがご負担とならないよう、
毎日使うことだけを考えるのではない選択も
してみてはいかがでしょうか?

何が、彼らの成長になるだろうか?

彼らの将来を作っていく時、
送迎というサービスは、
使い始めたからといって、
ずっと使うだけのものではないという部分も
立ち止まって考えていきましょう。