「その支援は嫌だ」への支援



知的障害がある人の支援者が
支援をしている際に、
一番見落としていることで、
見落としてはならないことを
書いておきましょう。

私たち支援者は、
知的障害がある人たちに、
できないことや困ったことを支援している際に、
今役立つもの、
将来役立つものを
中心に支援していると思いますが、
その際に、
自分や自分の組織の支援は、
だめな支援だとは思っていない傾向が強いと思います。

自分の支援が、
まだまだだと思ったり、
正解じゃない支援をしているかもしれないと思いつつも、
実際の現場では、
支援の相手に対して、
この支援が嫌だとは思っていないだろうと、
勝手に解釈をしているのです。

そのため、今受けている支援に対して、
「彼ら自身が良し悪しを判断する」ための支援を
入れていないのではないでしょうか?

この、自分がした支援に対し、
その人自身が、
よくないと判断することや
嫌だと言葉にすることを
ご本人に出来るようにするには、
やはり私たち支援者の支援に対して、
「苦情を言ってもよい」と言うことを
常に相手に伝え続けることです。

今している支援が良いのか悪いのか、
もうやめにして欲しいのか、
他の支援が良いのか、
決めてよいことを
自分の支援の最中に
必ず伝え続ける事が、
彼らにとって良くない支援の時に
「よくない」と言えるきっかけになるのです。

例えば、
Aという支援とBという支援の
どちらが良いのか選ぶと言うことを
常にしてみてください。

私たちはAと言う支援が良いと思って、
Aしかやらず、
他の支援を提供しないことが多くあります。

そこにあえて、Bという支援も入れて、
彼らがBという言う支援が良いと思えば、
それを言葉にすることができる環境を作ることです。

簡単な例ですと、
どっちの職員にしてもらいたいか?
というのもあるでしょう。
「違う支援」を選べる環境を用意するのです。

この「選択」を繰り返しすることで、
自分が選んだことが
自分に対しての支援の中心になる経験を
積むことになります。

さらに支援者がした支援を
これで良いのかと確認をしていくことで
良い悪いの判断をする機会が増え
自分の意見を言っても良いと言うことが
わかってきます。

彼らは、何事も経験があって、
その結果、次の経験になったり
自分の考えが持てたりするのです。

ですから、私たちがその機会を
提供することがとても重要なのです。

先ほども書きましたように
私たちは自分の支援に自信がないにも関わらず、
私たちの支援を押し付けるようなことをし、
彼らに選ぶこともさせず、
自分の支援を自分本位に
続けているという、
自分中心な支援をしているだけなのです。

彼らが人生の主体として
自分がして欲しい支援を自分で選び、
自分が嫌な支援があった場合には、
自分で嫌だと言えるような機会を作ることが
彼らにとっての
もう一つの大切な資源になるのです。

もちろん、自分がやった支援に対し、
嫌だといわれることは、
あなたは本意ではないと思いますが、
彼らの人生なので、
自分を前面に出すべきではないと思ってください。

それに、今後あなた以外の支援者から支援を受けた際に、
本当に嫌なことを断れないとしたら、
今関わっている支援者の支援が
不足であったことにもなりかねません。

自分の支援は、
本当に彼らにとって、良いものなのか
それとも良くないものなのか
ご本人に判断していただく材料を
同時に付け加えていくこともまた
必要な支援と考え
実行して行きましょう。

私たちの、この支援が、
ご本人にとって
将来必要になることも予測しましょう。

私たち自身の支援が良かったとしても、
今後その人が自立に向け、自己決定をし、
自分の人生の主人公として
自分の気持ちを
より表に出せるように、
判断することへの支援を
取り入れていきましょう。