それは「今は」ということ



知的障害がある人に、
支援者が何か質問をした時に、
いろいろな答え方をしてくると思いますが、
その答えに支援者が、
間違った解釈をすることがあります。

例えば、
「○○は、好きですか?」
「嫌いです」

「○○はやりたいですか?」
「やりたいです」

「就職がしたいですか?」
「したくないです」

などと言うことです。

こういった場合に、
支援者が勘違いしてしまいがちなのは、
「この人が、○○したくない(したい)のは、今までもこれからもずっと」
という解釈です。

例えば、就職の場合、
「就職しません」と言う気持ちは、
今だけであって、
もし、その人の考える条件が変わったら、
就職したくなることもあります。

不安で就職しないといっている時もありますし、
不安がなくなれば、就職する気持ちになる可能性もあります。

それを、1度、「就職したくないです」と言ったばかりに、
この後の人生すべてで、
その人が就職をしないと思っているように考えてしまい、
間違ったまま支援をしてしまう事があります。

知的障害の方は、
今を考えることができるけど、
将来にわたってと考えられない人もいるのです。

ですから、
「○○したくない」「○○したい」と言った時に、
「今は」という言葉を文の最初につけてみましょう。

そうすると、支援者自身の解釈が変わってきます。

「今は、○○したくない」
「今は、○○したい」

気持ちの変わり方には、
一喜一憂しないことです。
「今はそういう風に思ったのですね」と解釈をすることです。

例えば、こんなこともあります。
「もう二度とやらない」といって、
やっぱり、2度目があったりもします。
その時は、もうしないと決意したのに、
決断は簡単に打ち破られるわけです。

いや、もともと、
決断をしていたわけではないのかもしれません。
その場の支援者から逃れるための
言い回しかもしれません。

それに、二度とやらないという方法が
わからないときだってあります。

彼らの言葉は、
彼らにしか意図がわかりません。

でも、よく考えてみてください。
私たちもそういうことは多くあるのです。

ご自身のことがよく見えていないかもしれませんが、
簡単なことで、
ご自身が言っていて変わることは、いくらでもあります。

例えば、ラーメンを食べようとして入ったお店で
チャーハンを食べるような
そんな軽いイメージ。

今は、ラーメンを食べたいと思って入ったお店。
でも、その後、チャーハンのほうが食べたくなった。
と言うことです。
条件が変わったのでしょう。

彼らも、、
「就職しません」
と言ったかもしれませんが、気が変わることもあるのです。

条件が変われば、人間行動も変わるのですから。

それを大きなこととして一大決心のように
受け止めているのは、支援者だけなのです。

だから、言ったことと変わると、
「え?なんで?」となるのです。

間違っても、
その人が後から言うことが変わった時に、
「あの時、○○って言ったじゃない?」
というようなことで、
問題視しないことです。

人の気持ちは変わりやすいと知り、
彼らの言葉に翻弄されず、
なんでそう変わったのだろう?という部分や、
彼らのニーズに目を向けることです。

就職くしたくないといっているけど、
条件が変われば、就職できそうだという場合、
ニーズは、日ごろから捉えていれば、
就職に向けての支援をしていけるのです。

そして、今は就職したくないという気持ちも受け止め、
そういう気持ちになることもあるよね?と確認し、
就職したくない理由も確認していけば、
解決方向の支援も入れられるわけですから、
就職のための支援をやめる必要もなくなります。

表面的な言葉に翻弄されずに、
冷静になり、
真髄でとらえるようにしていきましょう。

あなたが、彼らの「今」の一言一言に、
巻き込まれるべきではないのです。