ひとりで課題解決するための支援



ひとり暮らしの知的障害の人は、
自分で判断しなければならないことも
多く存在します。

家族と一緒に暮らすとか、
施設やグループホームで暮らすことが、
こんなにも守られているものなのかと、
思うくらい、
ひとり暮らしという中で、
多くの「困ったこと」に遭遇します。

かといって、
困ったことを解決するには、
正論だけでは成り立ちません。

そこには生活があり、
ご本人がもともと持っている暮らし方があるからこそ、
簡単に解決しない
課題もあるということになります。

つまり、ご自身で解決すると決めなければ、
課題は山積みになるのです。

例えば、
コレステロールがたまっている人が、
買い物をすると、
どうしてもコレステロールが
たまりそうなものを買うことになります。

この人に、コレステロールにつながらない
食材の買い物をしてほしいと支援者が思っても、
買いに行くのはご自身ですから、
だめだというだけでは、
効果になりません。

自分で、買わないと決めるとか、
他のものを買うように決めるとか、
何かがないと行動に移せません。

また、目の前にあるとお金を使いたくなったり、
たのしいことをしていて終電を逃してしまったり、
ものをなくしてしまったり、
つきあう人を選ばなかったり、
片付けができなかったり。

たとえば、付き合う人を選ばないという場合、
友達という関係性で、相手からだまされたり、
搾取もありますが、
もう、お金を渡さないといいつつ、
ご本人から相手に連絡を取ってしまったりもするのです。

そのひとは、どんな暮らしをしていきたいのでしょうか?

それぞれの生活の中で、
問題が起きないように、
ご自分が一人で、
その時にどうするかを決めるために、
私たち支援者のアイデアは、
重要になるのです。

先ほども言いましたように、
「禁止」だけでは事が解決せず、
自分で、こうすると決めなければならない決意というか、
「行動を起こさせるもの」を
自分で用意しないと簡単には対処ができません。

それは、ご自身がリスクを感じたり、
生活を変化させたことで
何かが手に入ったりする
経験にもよるでしょう。

ですから、たとえば、自分から
「もうしない」
などと約束をしてきても
自分でどうするかを決められなければ、
約束を守らないことが当たり前とイメージしながら、
支援をすることです。

ある意味、彼らも
自分の人生に対して、
覚悟は必要だと思います。

たとえば、タバコを吸ってはいけないと
医者から止められても
吸ってしまう場合、
「そこまでしても吸うなら、
大きな病気になることも覚悟をしてのこと」
と自分で決めている場合もありますし、
そこがわからない場合もあります。

「あなたの人生ですよね?
好きに生きたいですよね?
それはわかります。
でも、好きに生きるということは
リスクもあるのです」
ということを
伝える必要があるのです。

支援者が言ったからやる
という気持ちだと、
長続きしません。

メリットデメリットを伝えることについては、
「人生の主役になるための情報提供」
に書きましたので、
そちらも参考にしていただければと思います。

取り上げたり、
禁止するのは、
「臭いものにふた」の原理。

目の前にそれがあっても、
やらないと決めたり、
嫌なことでも、
生活する上でやると決めたり、
そういう意味では、
ご本人の生活状況を確認しながら、
ひとりでできることを
その都度確認しつつ、
難しいのであれば、
別な方法を考えつつ、
支援者と二人三脚の構図で
進むことなのだろうと思います。

先ほども書きましたが、
怒ったり、取り上げても効果がないので、
何回も話してご本人が納得し
一人でできるものに目を向けながら、
何年もかけての支援になります。

できるようになったとしても、
支援者から言われなくなった途端に、
またそのことをしていることもあるのです。

支援者はめげないことです。
もともと当たり前だった生活を
変えることのほうが彼らも
エネルギーが必要です。

何度も確認しつつ、
ご自身が決められるように。
そこには、ご本人の想いや生活を
充分聞きながらになります。

絶対に変わりたくない人もいますので、
無理強いをしてはなりませんし、
それはいたしかたないと思うことも
あることでしょう。

最終的には、支援者が、
その人の人生をどうこうできませんから、
病気が重くなったのは
私の責任!などと思うようなことは危険です。
彼らの課題は、
自分から切り離して考えられるようにしましょう。