時間に間に合わない人のための時間逆算の支援



就職活動をしていた自閉症の人。

就職面接会があった時に、
集合時間に間に合わず、
遅刻をしてきました。

この人は、
「何時にどこに行く」
ということは理解をしていて、
そのための準備もできますし、
交通機関にも一人で乗れます。

当日も寝坊をしたのかというと、
そうではなく、
自分が起きようと思った時間に起きています。

何かアクシデントでもあったのかと聞けば、
何もありませんし、
いつも通りの朝食や準備をして
出かけてきたそうです。
交通機関の遅れもありませんでした。

でも、現実には遅刻。

ちゃんと起きました。
いつも通り準備をしました。
普通に来ました。

それなのに、
なぜ?という疑問がわきますよね。

その人の
「ちゃんと」
「いつも通り」
「普通に」
という言葉の裏にある、
その人自身の日常は、
私たちのそれとは、
全く違う場合があります。

ですから、
例えば、
面接会場まで、支援者であれば、
30分で行けるから、
30分前に出れば間に合うと思いきや、
人によっては、
いつも通りの移動の仕方で、
1時間かかる人もいるのです。

この、
私たちの「普通」という感覚と、
彼ら一人一人の「普通」という感覚が、
全く違うために、
このような事態になりうるのです。

これは、支援が必要な状態ですね。
ひとりでは理解できていません。

ですから、このような場合は、
家から駅まで何分かかるか?
など、細かな時間計算をしていきましょう。

例えば、朝食に10分しかかからない支援者に対し、
40分かかる人だとしたら、
もうその時点で30分の差が出てしまうのです。

このように時間を一つ一つ計算して、
合わせてみたのです。

これは遅刻しますよ!という時間数になりました。

ですから、
逆算になります。

面接会場に着いているべき時間から、
移動や朝の準備や朝食などに
どれくらいかかるかを逆算し、
起きる時間を決めます。

もしご本人に、早くしようという気持ちがあったとしても、
最初は、逆算から割り出した、
時間を決めていきましょう。

そして、
繰り返し、様々な場面で、
経験をするとよいでしょう。

たとえば、
10時の待ち合わせと、
13時の待ち合わせでは
その前にすることが違いますし、
交通機関の時間も変わってきます。

就職をしたいと思うほどの人ですし、
自己管理できることが望ましい状態です。

ご家族がいつも
その人の時間管理をすることは
望ましくありませんし、
それに、見ているそばから
「早くしなさい」と怒りかねません。

早くするのではなく、
その人のペースで、
間に合えば問題はありませんから、
その人が時間を自己管理する
支援を入れることです。

時間というものは目に見えませんし、
ずっと時計を見ているわけにもいきませんから、
むずかしいものなのです。

遅刻をしてはいけない時間に
間に合うために、
その前にすることの
時間の足し算をしていけば、
自分の中の「普通」や「通常」の中で、
支障もなく、
失敗した感触もなくなることでしょう。

その人の生活スタイルは変化させずに、
穏やかな気持ちで、
1日を過ごせると思いますよ!

私たちは、彼らの生活を
無理やり変化させることより、
工夫という手段で、
事なきを得る事の方が多いと思います。

彼らの障害はどこにあるのかを
見極めること。
そして、支援によって、
「障害」ではなくなる部分もあります。

そんな視点を持ちつつ、
彼らと関わっていきましょう!