好きなものを選ぶとは限らない



「あなたのことは、私が一番よくわかってる!」

という、支援者の気持ちは、
悪気があって出てくるものでは
ないと思います。

尽くしているというか、
親身になっているというか、
長年のお付き合いだからとか、
そんな感覚なのだと思います。

もしかしたらこの気持ちは、
親御さんに多いかもしれませんね。

でも、その感覚は、
時に相手の本当の気持ちを
表出させることを
阻害するものなのです。

知っているつもりになって、
なんでも、その人のことを
決めてしまっている。

例えば、何を食べようかな?と、
レストランの前で悩んでいた時に、
「○○さんは、ナポリタン好きだよね?」
みたいなことを言われてしまっては、
「じゃ、ナポリタンにするか」
と、その人の言うとおりにすることも
あるのです。

よかれと思った一言が、
相手にとって、
自分の「今日、食べたいもの」を言う機会を
奪う結果になろうとは、
思ってもいないと思います。

なぜなら、親切で言っているだけ。
この人これが好きだからと思うから。
そして、決められないのかなと
思っているかもしれません。

そこに何も悪戯がないので、
自分自身も気づかないのです。

これは、まちがえると、
精神的苦痛を
与えかねません。

そして、
何度もこういうことが起きていくと、
人権侵害や虐待につながることにも
なるのです。

本当にその人に、
自分の「知っている」ことを
押し付けていいのでしょうか?

たしかに好きなものかもしれませんが、
それを選ぶとは限らないのです。

ですから、待つことはできないですか?
その方が、ことばなり、表現をすることを、
待つことです。

たとえ、大好きなナポリタンでも、
今日は食べたくないという日があります。

いくら仕事が大好きでも、
今日はやりたくないという日もあります。

毎週、ヘルパーさんと
お出かけしていても、
行きたくない日があるのです。

好きなことでも、
いつもそれを選ぶとは限りません。

好きなことを選ぶことが
当たり前と思ってはなりません。

今まで嫌いなものだったものを
チャレンジしたい日だってあります。

私たち支援者側が良かれと
思ってやってきたことを、
一旦、立ち止まって考えてみることです。

その人のできることには
手だし過ぎないことです。

ご自身で表現できることを
待ってみませんか?
そして、その日の気分を
聞き出してみませんか?
 
好きなものは何?
ではなく、
食べたいものは何?
と聞くことです。

先ほども書きましたように、
好きなものと食べたいものは
違うからです。

その日の気分かもしれませんし、
その日の決意かもしれません。
もしかしたら、
お店からのお勧めを
選ぶかもしれません。

ご本人の感情は常に大切に
されるべきだと思います。

選べるのか選べないのかは、
少し待てば、結果が出ます。

いつも決められないとは限りません。

好きなものということより、
今日も選びたいものを
優先できる支援をしていきましょう!