「障害者」という枠



様々な方の相談を受けたり、
様々な方に関わっていると、
「障害」とは、
何のことなのかと
考えることにつながることがあります。

私自身は「障害」という字をひらがなにも
ほかの漢字にもしません。

様々な意見はあると思いますが、
自分の考えとしては
「その人が、世にとっての障害」なのではなく、
「その方の生きていくうえで
環境や他人から障害を受ける人」の
意味だと捉えているので、
「障害」と書きます。

なので、今日これから書く記事には、
その「障害」が多数出てくるのですが、
「その方の生きていくうえで
差し障りがある環境や
他人から障害を受ける状態」の事を
意味しています。

まずは障害者の枠の中に
入っていない方なのですが、
その方が困っていたり、
障害と捉えていないのに、
回りから、
「あなた、この職場で
課題が多いから努力しなさい!」という
意味のことをいわれ続けている社会人に
お会いしました。

その方は、
「自分は、これが普通と思うし、
学校時代には何も言われなかった。
でも、社会人になった今、
回りからは、おかしいといわれる。
自分は障害者なのでしょうか?」
と言う質問。

どんなところに、
回りから言われるのかを伺うと、
あまり覚えていない状態です。

「こういうことはありましたか?」と質問をすると
「ありました」と思い出すことができます。

それくらい、
ご本人は、困っていない自分の生活だけど、
周りの人は、彼の行動に困っているのです。

ご本人が思い浮べている
「障害名」がありましたので、
インターネットを使って説明し、
この障害かもしれませんねとお話ししました。

そのうえで、
周りを困らせるきっかけになっている行動について、
ご本人の障害が減るためのアドバイスをしました。

ご自分が「障害者の枠」の中に
いてよい事がわかり、
ほっとしているようでした。

なぜなら、
今までは自分一人でがんばってきたわけで、
枠の中に入れば、
自分の行動の仕方のヒントが隠されており、
支援が受けられる可能性もあり、
安心したようです。

その人が、今後、
障害の診断を受けるかどうかは
わからないですが、
自分の身の置き所が
わかったということで
ご本人にとっては、よかったのでしょう。

そして、ある人は「自分は障害者ではない」と訴えます。

「なんで、いつも障害者ばかりのところに
自分がいるんだろう・・・」と訴えるのです。
つまり、「障害者」とされたことが、
自分にとっての一番の「障害」だと。

幼少のころから、
様々な福祉サービスの中にいたその人は、
「自分の人生は、
自分で決めてはいけないのですか?」というのです。

そして、
「どうやったら障害者の枠から
出られるのですか?」と
相談をされました。

生活そのものに「障害」があるから
困っているのではなく、
福祉的な「障害者」にされてしまったから、
困っているという構図なのです。

福祉サービス関係者に
仕立て上げられたとしか思えない状態だそうです。

ちょっと、知的能力が平均より低くても、
精神科に通っていても、
ちょっと身体に不具合があっても、
みんながみんな、
「障害者」でなくても良いのです。

この人の場合、
障害者手帳を返せば、
ある意味、
障害者ではなくなります。
そのかわり、
今受けているサービスもなくなります。

ですから、今は「障害の枠」にいたほうが
福祉サービスを受けられるメリットもあります。

支援者側の感情論ではなく、
どの位置にいることで、
ご本人が、メリットがあるかという捉え方も
していきたいとも思うのです。

「障害」という「枠」の中に
入ったほうが楽になる人と、
その「枠」にいる事自体が
「障害」だと感じる人と、
そんなおふたりに会って、
自分の人生を、
やっぱり自分で決められるように
支援するべきだと考えました。

障害というものが
自分自身の中に、
悪い感情としてある場合、
社会から受けるものだったり、
支援者からの管理だったり、
その人その人の、
負ってきた過去があるからでしょう。

あくまでも、
障害は、その人ではなく、
社会から受けるものとしてあるわけで、
私たち支援者自身や周りの人が、
ご本人をどう見るかは
重要なのだと思います。

障害があるから困っている人
障害があるからできないことがある人
障害があるから支援が必要な人

それを、
障害を克服するようなイメージで
支援者が関わることは間違いです。

そのうえで、
ご自分の状態を
障害者から見たほうが良い人と
障害者から抜け出してみたほうが良い人といます。

それは、ご本人が決めることです。

周りが、全て、障害者を
なくしてしまったほうが良い
というのは感情論です。

障害者でなくなり
サービスを受けられないこともまた
困ってしまうことでしょう。

障害者というのは、レッテルなのか
障害者というのは、サービスを受けられる証明なのか

そのあたりは、自分自身が、
決められるように
情報提供もしたいところです。

そして、社会にある障害を
取り除いていこうということを
障害がある人が
言い続けることではないと思いますし、
その人が社会の障害なのではないということを
私たち側から発信していくことです。

ご本人の社会の中で感じる「障害」を
減らしつつ、
ご本人に寄り添って、
生活がしやすくなるよう
まだまだやることは
たくさんあると思います。